パット・ゲルシンガー最高経営責任者(CEO)による米半導体大手 インテル 再建の試みは突然終わりを迎えた。次に同社を率いるのが誰であろうと、偉大な功績を求められることに変わりはない。
インテルは2日、ゲルシンガー氏がCEOを退任し、取締役会からも退くと発表した。平和的な移行を装ってはいても、実情は明白だった。ゲルシンガー氏は「ほろ苦い」日だと述べ、フランク・イヤリー取締役会議長はプレスリリースで、「投資家の信頼回復」という目標に言及した。S&Pグローバル・マーケット・インテリジェンスのデータによると、インテル株の11月29日終値は2021年初めのゲルシンガー氏のCEO就任日を61%下回り、フィラデルフィア半導体指数(SOX)の構成銘柄で値下がり率トップだった。S&P500種指数は同期間に53%上昇した。
こうした不振の後のCEO退任が希望をあおるのは当然で、インテル株は2日午前に5%余り急伸した。ただその後は値を下げ、小幅安で取引を終えた。退任を受け、短期的にも長期的にも同社の先行き不透明感が増している。取締役会が後任を探す間、デービッド・ジンズナー最高財務責任者(CFO)とパソコン向けチップ事業を率いるミシェル・ジョンストン・ホルトハウス氏が暫定共同CEOを務める。インテルのプロセス(ノード)が半導体ファウンドリー(受託生産)最大手の台湾積体電路製造(TSMC)に追いつきかけているとされる中、トップが宙に浮く格好となる。
その競争の集大成が「インテル18A」と呼ばれる製造プロセスだ。インテルは10月31日の決算説明会で、このプロセスでは初のチップを来年半ばに出荷する見通しを明らかにした。インテル18Aの成功に多くのものがかかっている。ゲルシンガー氏は4年間で五つの「ノード」を実現する計画を掲げていた。インテル18Aはその最終段階となる(インテルはかつて一つのノードに少なくとも2年を費やしていた)。
このため、あと一歩のところでのCEO交代に驚きの声が上がるのも無理はない。TDカウエンのジョシュア・ブチャルター氏は2日付の顧客向けメモで、「『4年間で五つのノード』という指針の旗手だったゲルシンガー氏の突然の退任は、インテルの今後の戦略的道筋に不安を感じさせる」と述べた。バーンスタインのステイシー・ラスゴン氏も自身のリポートで、「少なくともインテル18Aが世に出る(そしてその競争力が明らかになる)まではパットが残りそうな気がしていたが、そうはならず、今後プロセスの確実性に何か悪い知らせが出てくるのではないかと勘繰らざるを得ない」と述べた。