米インテルの2024年7~9月期決算は約2兆5000億円の最終赤字となった。半導体業界をリードしてきた大企業が、わずか3カ月で巨額赤字を計上するに至った要因とは何だったのか。(やさしいビジネススクール学長 中川功一)
米インテルが2.5兆円の最終赤字
半導体の雄が「全領域で苦戦」
かつての半導体の雄が、事業継続の危機に瀕している。
米半導体大手インテルが10月31日に発表した2024年7~9月期決算は、166億3900万ドル(約2兆5000億円)の最終赤字となった。2.5兆という数字のインパクトがあまりに強く、それがわずかに四半期の数値であることを見落とした人もいるのではないか。
なお、赤字はこれで3四半期連続となった。今後は好転していく見込みではあるものの、根本的な課題が解決していないことから、事業存続は難しいかもしれない……というのが識者の見立てである。
本日はその「インテルが抱える根本的な課題」について、解説したい。
包み隠さず言えば、そのインテルが抱える課題とは、業界でももはやほとんど採用されていない「製造と開発を垂直統合する」という事業モデルである。
TSMC、エヌビディアに後れ
打開策は見いだせず
インテルの苦境の表層的な理由は、全事業で競争劣位にあることだ。
主力のCPUでは、致命的な設計のミスが何年か続いてしまい、それに対する顧客対応も不十分なものであったため、顧客の信頼を損なう状態となってしまった。
一方、インテルとして保有する巨大な生産能力を活用すべく、肝いりで始まった半導体の受託製造事業は、業界トップの台湾TSMCと比較して技術力に劣り、こちらも伸び悩んでいる。
そしてもう1つ、現在の花形製品であるデータセンター・AI(人工知能)向け半導体では、参入の遅れから、先駆者たる米エヌビディアに大きく差をつけられてしまっている。
主力事業は不振。製造能力を生かした受託事業でも、開発能力を生かしたAI・データセンター事業でも後れを取っている……という状況で、打開策が見いだせていないというのがインテルの現状なのだ。