米インテルは半導体の「18A」プロセスを投入し、AI向けの半導体受託製造ビジネスで初めて台湾TSMCと激突することになる。インテルは2030年までにどうやって世界2位のファウンドリーの座をつかむのか。特集『TSMC vsインテル AI半導体決戦』(全6回)の#5では、半導体製造“元王者”の復権を左右する、四つの重要な鍵について深掘りする。(台湾「財訊」林宏達、翻訳・再編集/ダイヤモンド編集部副編集長 大矢博之)
インテル「18A」をマイクロソフトが採用
2030年までに世界2位のファウンドリー目指す
2月22日に開催された米インテル初のファウンドリー事業のイベント「インテル・ファウンドリー・ダイレクト・コネクト」は、半導体の受託製造ビジネスに本格的に乗り出すと宣言したパット・ゲルシンガーCEO(最高経営責任者)の言葉を体現するキックオフと見なされた。
ゲルシンガー氏は講演で、AI時代を見据えた世界初のシステム・ファウンドリーとインテルを位置付け、最先端の「18A」プロセスで7兆ドル規模の人工知能(AI)向け半導体市場を獲得すると掲げた。
「多くの顧客が注目しており、インテルのプラットフォームへの移行を迷っている」
インテルのクリストフ・シェル主席副社長兼最高商務責任者は「財訊」のインタビューでこう明かし、「だから米マイクロソフトの18Aプロセス採用の発表は、われわれにとって非常に重要だ」と説明。顧客はインテルの18Aプロセスを使用する半導体の設計ができるようになっているといい、「量産時期は来年になる見込みだ」と述べた。
インテルの18Aプロセスの性能は、台湾TSMCの3nmプロセスに匹敵すると推定されている。
さらに米政府の強力な後押しもある。3月20日、米政府はインテルに最大85億ドル(約1.3兆円)の補助金を出すと発表。最大110億ドルの融資と合わせて195億ドル(約2.9兆円)の支援が決まった。補助金などを活用し、インテルはAI向けの先端半導体の研究開発や工場新設など、5年間で米国に1000億ドルを投資する計画だ。
しかし、インテルが最先端の半導体をファウンドリー事業の顧客に生産できるかどうかはまだ分からない。
歩留まりはどうなるのか? どのくらいの生産能力を提供できるのか? 顧客サービスに特化した受託製造ビジネスの文化を確立できるのか? 全てが未知数である。
インテルは世界の半導体業界ではベテランだが、ファウンドリー業界では新参者だ。「2030年までに世界2位のファウンドリーになる」というゲルシンガー氏の目標を達成できるかどうかは、四つの重要な鍵に懸かっている。