今年9月、世界的な医学誌の英「ランセット」の専門家委員会から、「修正可能な認知症の14の危険因子」が報告された。ここでは18~65歳で修正したい10の危険因子とその対策を紹介しよう。
まずは「難聴」だ。若年層は大音量・長時間の音楽聴取を控え、「ヘッドホン難聴」のリスクを減らしたい。すでに耳が遠くなっている場合は、迷わず補聴器を試すこと。中高年期に難聴があると認知症発症リスクが2倍に上昇するという報告もあり、放置できない危険因子の一つだ。
次はおなじみの「高血圧」「高LDLコレステロール血症(脂質異常症)」「糖尿病」、そして「肥満」だ。生活習慣病は血管性認知症、アルツハイマー型双方の明らかなリスクだ。早めに対策しよう。「肥満」はちょっとややこしい。日本人は中高年期こそBMI(体格指数)22近辺の標準体形を目指したいが、65歳ごろから、多少増量したほうが認知症予防に働く。特に女性の痩せすぎは禁物だ。
生活習慣では「喫煙」「過度の飲酒」「運動不足」が修正可能な危険因子だ。加熱式たばこは検証途上だが、紙巻きたばこは30~40代のうちに禁煙しておきたい。
最後に「頭部外傷」と「うつ病」が取り上げられている。
頭部へのダメージは、認知症のほかパーキンソン病のリスクでもある。身体接触レベルが高いスポーツではヘッドギアを装着し、自転車に乗る際はヘルメットをかぶろう。サッカーのヘディングも頻用しないほうが良さそうだ。
うつ病は気づきにくいため修正が難しいかもしれない。たとえば、睡眠不足や食欲不振が続き、仕事の効率が落ちているようなら思い切って休暇を取ること。ストレスチェック制度を利用して、産業医に相談してもいい。
ここであげた10項目を全て修正した場合、認知症の発症リスクは3割減少する。すでに一部の先進国では認知症患者が減少しており、世界的に「認知症は予防、あるいは発症を先延ばしできる疾患」という認識が拡がっている。
とりあえず、個々人でできることからコツコツ修正していこう。
(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)