高血圧は「アプリ」で治す時代?医師がQRコードで処方する「スマート降圧療法」の実力とは患者の血圧の記録は、担当医師が常にアクセスできるため、診察がないタイミングでも遠隔で確認できるという。医師と患者が二人三脚で取り組むのが、スマート降圧療法の肝なのだ(写真はイメージです) Photo:PIXTA

「2022年国民生活基礎調査」によると、傷病で通院している人々のうち、通院率がもっとも高い疾患は男女ともに「高血圧症」だという。この国民病とも言うべき高血圧症の主な治療法は、従来、食事・運動療法による生活習慣改善と薬物療法の2つだった。そんななか、2022年にスマホアプリを活用した「スマート降圧療法」の提供がスタート。薬事承認と保険適用を受けた治療法とのことだが、一体どのような内容なのか。実際に処方している医師に話を聞いた。(清談社 真島加代)

高血圧治療が抱える
大きな課題とは

 加齢や運動不足、過剰なストレスと塩分の多い食生活など“不摂生”が主な原因となる生活習慣病「高血圧症」。自覚症状はほとんどないが、血圧が高い状態を放置すると、脳出血や脳梗塞、心筋梗塞などの重篤な疾患を招くため、適切な治療が必要だ。

 医療法人春陽会サクラクリニック院長・野田泰永氏は、現代の高血圧治療が抱える課題を次のように解説する。

「高血圧症の治療は、医療機関で栄養指導を受けて実践する食事療法・運動習慣を身につけることによる運動療法などの生活習慣改善と、血圧を下げる薬(降圧薬)による薬物療法が一般的です。ただ、それらの治療法は、来院時に聞いた栄養指導の内容を覚えきれなかったり、運動は長続きしなかったり、薬を飲み始めるとなかなか手放せなかったりといった課題がありました」