2017年の発売以降、今でも多くの人に読まれ続けている『ありがとうの魔法』。本書は、小林正観さんの40年間に及ぶ研究のなかで、いちばん伝えたかったことをまとめた「ベスト・メッセージ集」だ。あらゆる悩みを解決する「ありがとう」の秘訣が1冊にまとめられていて、読者からの大きな反響を呼んでいる。この連載では、本書のエッセンスの一部をお伝えしていく。
「偶然に起きることが多すぎる」のは、神様がいる証拠らしい
広島で講演会があったときのことです。講演会の翌日、私が宿から10kmくらい離れたお店に入ったところ、講演会に参加されていた3人の親子が10秒くらいの差で入ってきました。「あっ、小林正観さんですね」「はい。昨日、聞きに来られた方ですね」
4人で、一緒に、ランチを取ることになりました。
食事の最中に、お父さんが、「正観さんの話はとてもおもしろかった」と言ったあと、「じつは私は、ガンなんです」と打ち明けてくださいました。
ご家族は広島市内に住んでいるのですが、ご主人は、余命いくばくもない。それで、好きなことをするために、海の見える高台にアトリエを構えているそうです。
食事のあと、アトリエに連れて行っていただきました。アトリエで、古いカメラ、楽器、精巧なミニチュアカーなど、自分の好きなものに囲まれ、海を見ながら、好きなことをして暮らしているとのこと。
私もその日は急ぐ用事はなかったので、ゆっくりお話をさせていただきました。その1年後のことです。広島で行われた講演会に奥さんがお越しになって、このように言われました。
「昨年、親子3人で、一緒に食事をさせていただいた者ですが、覚えていますか? その後、夫が亡くなりました。3月12日でした。主人は、『今年も、小林正観さんにお会いできるかな』と言っていたのですが、残念ながら亡くなってしまいました」
去年会ったのは、たしか4月か5月です。そのときは、「余命いくばくもない」と言われていたそうですが、あれから1年ほど、生きておられたことになります。
私は、「うたしごよみ」という日めくりカレンダーを出させていただいています。「うたしごよみ」の「12日」には、「覚悟」という言葉を私が書き、それに続く形で「良寛和尚の言葉」を書かせていただきました。
災難に遭いそうになったら、遭う。
死にそうになったら、死ぬ。
それが災難よけの最良の方法。
―良寛和尚の言葉―
このご主人は、「うたしごよみ」を病室の壁に貼っていたそうです。すると、あるときから、日めくりが「覚悟」のページから変わらなくなりました。
奥さんが「12日を過ぎているから、めくろうか?」と聞くと、「めくらないでくれ」と言われたそうです。
おそらく、ご主人にとって、いちばん見ていたいメッセージだったのかもしれません。死が近づいてくるのがわかって心が動揺したとき、「覚悟」という言葉を何十回も何百回も見直すことで、心の安らぎを得ていたのではないでしょうか。
だから、日めくりをめくることができなかったのだと思います。この方が亡くなったのは、3月12日なのですが、その「覚悟」という言葉が綴られているのも、「12日」なのです。
この世に「神様はいない」と思ってもいいのですが、それにしては「偶然に起きることが多すぎる」と私は思います。
「あなたが自分に言い聞かせようとしたことを、間違いなく神様は受け入れます」というメッセージとして、「12日」にその方を連れて行ったのではないかと、私は思います。