2017年の発売以降、今でも多くの人に読まれ続けている『ありがとうの魔法』。本書は、小林正観さんの40年間に及ぶ研究のなかで、いちばん伝えたかったことをまとめた「ベスト・メッセージ集」だ。あらゆる悩みを解決する「ありがとう」の秘訣が1冊にまとめられていて、読者からの大きな反響を呼んでいる。この連載では、本書のエッセンスの一部をお伝えしていく。

ありがとうの魔法Photo: Adobe Stock

「自分が嫌い」という悩みを、一瞬で解決する方法がある

 何人かで「生き方」「生きざま」について話をしているとき、それほどの話でもないのに、すぐに涙ぐんでしまう女性がいました。事情を聞いたら、「3日前に、つき合っていた男性と別れた」というのです。

 さらに事情をうかがうと、その男性は何かの病気の後遺症を持っていて、年を重ねるにしたがって、その症状が重くなるのだそうです。彼女は、それをわかったうえで、彼と結婚するかを悩み、考えてきました。

 そして結果的に、2人は別れることになりました。しかし彼女は、自分勝手なことをした気がして、自己嫌悪に陥りました。「心が晴れない」と言います。

「もう決めてしまったのですね?」と私は聞きました。

「はい。決めたんです」

「戻りたいのですか?」

「いいえ、戻りたいわけではないんです。ただ、自分がとても嫌な人間に思えて……」

「戻りたくて苦しんでいるのではなく、別れようと判断した自分に苦しんでいるということなんですね?」

「はい。すごく冷たかったんじゃないか、自分勝手だったんじゃないか、って」

「もう決めてしまったことであり、後戻りできないし、したくない。そこを出発点に考えましょうか」

「はい」

「じゃあ、この先、こういうふうに生きることにしませんか? 『あのとき、彼と結婚していたほうが、ずっとラクだった』と思えるような、大変な人生を選ぶ

 この提案は、彼女をずいぶん驚かせたようでした。

「もっと大変って……」

「たとえば、これから勉強をし直して、医者や看護師を目指す……。大学に入り直して心理学を学び、カウンセラーやセラピストとして悩んでいる人の心を救う……。介護施設や障害者施設などの職員になり、一所懸命に仕事をする……。井戸の掘り方を勉強し、世界中の砂漠地帯に出かけていって、井戸を掘り続ける……。音楽を勉強して、『聴くだけで元気になり幸せになる』という曲を1000曲つくる……。『見ただけで心が安らぎ平和な気分になる』という絵を1000枚描く……。もっと言いましょうか?」

 彼女は明るく笑いました。

「もう大丈夫です、よくわかりました(笑)。それにしても、よくそんなに次々と思いつきますね」

「私自身が、『大変だろうな』と尊敬と敬意を持って見つめている仕事を挙げただけです。あなたも、そういう『大変なこと』を自分で背負い込んだらどうですか? そうすれば、『あの人と結婚したほうが、ずっとラクだった』と思えるのではないですか?」

 実際に彼女は、誰もが大変と思う仕事を選び、誰もが驚くほどの忍耐力と頑張りを見せました。

 その結果、「肉体的には大変だけれど、彼に対するうしろめたさや申し訳なさは消えた」ということです。自分で自分が許せないと思ったときは、より過酷な条件を自分に課してみる。そうすることで問題は解決します。

 その結果、「宇宙(まわりにいる人)」が喜んでくれたとしたら、悩んだことが、むしろ「よかったこと」だと思えることでしょう。