2017年の発売以降、今でも多くの人に読まれ続けている『ありがとうの魔法』。本書は、小林正観さんの40年間に及ぶ研究のなかで、いちばん伝えたかったことをまとめた「ベスト・メッセージ集」だ。あらゆる悩みを解決する「ありがとう」の秘訣が1冊にまとめられていて、読者からの大きな反響を呼んでいる。この連載では、本書のエッセンスの一部をお伝えしていく。
人生には「テーマ」が必要。「テーマ」なしに生きるには、人生は長すぎる
人生には、「テーマ」が必要な気がします。漫然とテーマなしに生きるには、人生は長すぎると思うのです。
ただし、ここでいう「テーマ」とは、まわりから与えられた義務的なものを指し示しているわけではありません。学業や仕事などで、「これをしなければいけない」「しかたがないので、嫌々ながらやっている」と「must(ねばならない)」と考えている間は、ここで言う「テーマ」に当てはまりません。
「やらなくてもよいこと」を自分に課すこと。それが私の考える「テーマ」です。
ある有名な禅寺で、3泊4日の「座禅体験会」があり、私の友人が参加しました。10人ほどが参加したそうです。質疑応答の時間に、ひとりの女性が、「いちばんつらい修行は何ですか?」と雲水(修行僧)たちに尋ねました。
すると、ひとりが進み出て、こう言ったそうです。
「他の方はわかりませんが、私自身のことをお話しします。冬になると、ここはとても寒いので、日が昇っていない明け方は、とくに寒さが厳しい。当番で朝の鐘をつくときは素足ですし、1回つくごとに石の上に座り礼拝をするので、肉体的には、これがいちばんつらいと思います。でも、本当につらいのは、そんなことではありません」
参加者は続きを聞きたくて、みな、身を乗り出したそうです。
「私たち修行僧には、掃除の当番が決められていて、ある人は廊下、ある人はお堂と、割り当てられています。しかし、その掃除をチェックしに来る人はいないんです。廊下は丸1日使われないこともあるので、汚れていません。今日、掃除をしなくても、誰にも気づかれない。つまり、サボることも、怠けることも、手を抜くこともできるわけです。手を抜いたことが知られても、誰も、何も言いません。私にとっていちばんつらいのは、立ち上がってくる『怠け心』『ごまかし心』と戦うことなのです。誰かが管理し、チェックする。できていないときは怒鳴ってくれる。そういうしくみやシステムがあったほうが、ずっとラクだと思います。人間だから、怠けそうになる。『誰も見ていないから』と手を抜きそうになる。けれど仏は見ている。この心の葛藤との戦いが、自分にとって、もっともつらい修行です」
私はこの話を聞いて、「その雲水はすごい人だ」と、唸ってしまいました。なぜなら、「僧」としての「テーマ」を、自分なりに、強く、深く認識しているからです。
「しなくてもいい」という状況に置かれたとき、自分の意志で何をし続けるか。それこそが、人生の「テーマ」です。
「テーマ」にもいくつか種類があります。雲水の話は「あなたが今取り組むべき課題」であり、「短期のテーマ」と言えそうです。
「この人生をどう生きるか」「何を残していくか」は、「中期のテーマ」でしょう。
さらに、魂が何千回、何万回と生まれ変わって追い求めていく「長期のテーマ」も、一人ひとりにきっとあるはずです。
この「3つのテーマ」に気づくことが、私たちの人生を味わい深いものにしてくれるような気がします。