今、世界中で「ストイシズム」の教えが一気に広がっている。日本でも、幸せな金持ちとストイシズムの興味深い関係を描いた『THE ALGEBRA OF WEALTH 一生「お金」を吸い寄せる 富の方程式』が話題だ。著者は『the four GAFA 四騎士が創り変えた世界』がベストセラーとなり、「世界最高のビジネススクール教授50人」に選出されたスコット・ギャロウェイ。日本で「GAFA」という言葉を定着させた全米屈指の人気教授が明かす「世界最先端の“お金と人生”の戦略」とは? 世界600万部突破『サイコロジー・オブ・マネー』著者モーガン・ハウセルとゴールドマン・サックスCEOがダブル推薦する全米ベストセラーより内容の一部を特別公開する。(構成/ダイヤモンド社・寺田庸二)。

100%幸せな1%の「お金を吸い寄せられる人」と残酷にも「お金が離れていく人」。その運命を分断する、たった1つのシンプルですごい要因とは?Photo: Adobe Stock

「お金を吸い寄せられる人」と「お金が離れていく人」の決定的な差とは?

世の中には、「お金を吸い寄せられる人」がいる一方、「お金が離れていく人」もいる。

金持ちは、よく風刺の対象になる。

人気テレビアニメ『ザ・シンプソンズ』に出てくる、狡猾で不正直で、他人を騙すことによって富を得ているモンティ・バーンズがその好例だ。

しかし私の経験上、実際にはその正反対だ。

富裕層には徳の高い人が多い。

他人に親切で、勤勉で、浪費や贅沢を慎み、信念がある。それは驚くべきことではない。まわりから好かれているほうが、そうでない場合に比べてはるかに成功しやすいからだ。

人格が優れていれば、富を得やすくなる。

もちろん、どんなことにも例外はある。
徳性が低いにもかかわらず、あるいはむしろそれを武器にして、大きな富を手に入れる人もいる。

しかし、だからといって彼らを手本にすべき理由にはならない。

それに、徳性が低いにもかかわらず富を得た人たちは、人生の道を踏み外すことが多く、結果として富を失いやすい。

間違いを犯し始めても、まわりから救いの手を差し伸べてもらえない。
厳しいことを言ってくれる本当の友人もいない。いるのは、イエスマンだけだ。

人格は富を生み出すのに役立つだけでなく、富を守るうえでもカギになるのだ。

他人に奉仕する意識が大切な理由

他人に奉仕する機会を積極的に探そう。
たいていの人にとって、最も深くて強い人間関係の絆は家族になる。

伝統的に、モルモン教の家庭では収入(または財産)の10分の1を教会に寄付する。

これは仕事をする強力な動機づけになる。
自分の仕事が、崇高な目的に結びつけられるからだ。

私の経験では、崇高な目的のために意欲的に働くことで収入が上がるため、この10%のコストは十分に元が取れる。

民主主義国家は、指導者を有権者に奉仕させる。企業は、CEOを株主利益のために働かせる(理論上も、そしてほとんどの場合、現実にも)。

他人に奉仕する意識は、私たちが成功すればするほど重要になってくる。
なぜなら、どんな分野であれ、成功は権力をもたらすからだ。

富という権力、他人のキャリアを支配する権力、世界を変える権力――どんな形であれ、権力は私たちにコストを軽視し、報酬を拡大させることを促す麻薬になる。

権力を持つ人は、そうでない人に比べ、本能に従って行動する心理的傾向が強い。

これは職場でのセクハラの一因になる。
権力は無意識のうちに性的興奮に影響を及ぼす。

性加害やハラスメントをする人に共通するのは、自分の誘いは歓迎されていると信じていること。
権力は、人を勘違いさせる。

その解毒剤は、他人に奉仕する意識を持つことだ。

個人的なもの(子ども)、組織的なもの(教会、役員会)など、どんな形でもいい。

オリバー・ストーン監督の映画『ウォール街』で、利己的な欲望の権化と呼ぶべき登場人物ゴードン・ゲッコーが、自らの信奉者に向かって

「友人がほしければ、犬を飼え」
と言うシーンがある。

彼がいかに利己的で下衆な人間であるかをよく物語るセリフだ。

だが、これは良いアドバイスでもある。

それは犬が忠実だからでも(実際に忠実だ)、愛情深いからでもない。
犬があなたを必要としているからだ。

(本稿は『THE ALGEBRA OF WEALTH 一生「お金」を吸い寄せる 富の方程式』の一部を抜粋・編集したものです)