三宅 伊東さんのお話聞いてると、ラジオもテレビの司会もピンチヒッターで何でも全部一応こなしちゃうわけですよね。何か将来こうなりたいから、そのためにこれをやったほうがいいとかあるじゃないですか。伊東さんは、小っちゃい頃は何を目指してたんですか?
伊東 芸能界ってのは、うんと遠いところにあったんだよ。
三宅 昔の芸能界は今よりも遠かったですよね。
伊東 うん。テレビがないし、もちろん映画なんか遠くて遠くて雲の上だから。好きで観てるだけで、自分がそっちに行こうなんてこと、これっぽっちも考えたことはなかったんだよね。
三宅 それで就職試験を受けて、全部落ちたんですよね。
伊東 そう、すべて。どっかに入りそうなもんだと思ったけどなあ。
就職試験に全落ち!
そんな時、ある人に声をかけられ……
三宅 でもそれって、今の伊東さんになるための何か運命的なものを感じますね。面白いなあと思いますよ。
伊東 何十社と受けてますよ。それで受けては落っこって、受けては落っこって帰ってくる。帰ってくると教室でみんなが「伊東、お前またか」って。そんな時、友だちの親がある製薬会社の重役でね。「お前、うちの会社に来るか」「行くよ、当たり前じゃない!」「一応、話ししてみるからさ、その代わりコネ丸出しは困るからちゃんと試験だけ受けろ」って言われて、試験を受けたら落っこったんだ。
三宅 それは話がいってなかったんじゃないですか?
伊東 話はいってたでしょうね。でも、よっぽどダメだったんだ。
三宅 そこで、もし受かってたら今の伊東四朗はいないと。
伊東 いないです。どこかに入社していたら、何があっても辞めませんから。