三宅 他人事のようですけど、きっとそうでしょうね。

伊東 中途半端がイヤなのかも知れないですね。

三宅 だって伊東さんはセリフを覚えられなくなって、たくさんの人に迷惑かけるのがイヤだから、普段から記憶力を鍛えておこうという人ですもんね。

伊東 まあそうです。それで覚えが良いって言われると、それは絶対違うって言うんですよ。俺はもっと早くから皆さんより覚えてるから、何とか追いついてるだけで、けっして記憶力がいいわけじゃない。

三宅 自分は子どもの頃から芸能関係の中で生まれ育ってるんで、どこかに自信みたいなものを持ったままこの世界に入って、ものすごい壁にぶつかって挫折してるんですよね。だから、伊東さんの全然そんな気がなかった、なる気がなかったのに、結果的になっちゃっていく運命というか人生。それがここまできちゃうすごさっていうのを改めて感じますよね。だから、伊東さんはきっと真面目な人で、やる時は本気でやるからなんだろうなって思いますね。

伊東 就職試験を一社でも受かってたら結構いいトコいってたかもしれない。

三宅 それはそうだと思いますよ。きっと重役クラスまでいってるんでしょうね。

伊東 あるかもしれない。確率はごくわずかだけれど。

三宅 だから人生って本当に面白いなって思いますね。

伊東四朗:タレント
いとう・しろう/1937年、東京都生まれ。石井均一座に参加。三波伸介、戸塚睦夫とのトリオでステージを重ね1962年から「てんぷくトリオ」としてテレビなどに進出、人気を博した。70年代中盤から『みごろ!たべごろ!笑いごろ!!』、「電線音頭」でベンジャミン伊東など、バラエティ、ドラマ、映画、ラジオ、CMなど多方面で活躍。代表作にNHK朝ドラ「おしん」の父親役、『西村京太郎サスペンス 十津川警部』シリーズ、『笑ゥせぇるすまん』、『おかしな刑事』、CMではヤクルトのタフマン、バラエティで『伊東家の食卓』のお父さん役など。現在もラジオ『伊東四朗のあっぱれ土曜ワイド』、『伊東四朗吉田照美 親父・熱愛』(ともに文化放送)に出演中。