優れた投資家のアドバイスの1つに「スマホのニュースアプリの通知をオフにせよ」というものがある。ネットに蔓延るあまたの株に関するマイナスな記事は、投資家にとって注意喚起になるどころか、せっかくの自らのチャンスを潰してしまうようなものばかりだというのだ。本稿は、ニコラ・ベルベ著、土方奈美訳『年1時間で億になる投資の正解』(新潮社)の一部を抜粋・編集したものです。
モナリザに付加価値をつけた
100年前の盗難事件
経済予測の唯一の効用は、占星術をまともだと思わせることだ。――複数のアメリカ大統領のアドバイザーを務めた経済学者ジョン・ケネス・ガルブレイス
パリのルーブル美術館を訪れたことがあるだろうか。もしあるなら、きっと「モナリザ」を鑑賞するために行列しただろう。
レオナルド・ダ・ヴィンチが1507年頃に描いたこの傑作は、世界で最も有名な絵画と形容されることが多い。「モナリザ」はまた世界で最も高価な絵画でもある。
保険金を算定するための評価額は10億ドル近い。その人気は高く、毎年ルーブルを訪れる1000万人の来館者のうち実に800万人が、モナリザの謎めいたほほ笑みを観るのを目的としているという。
ルーブルは3万5000点以上の美術・古美術品を展示する世界最大の美術館だが、そのなかでも誰もが観たいと思う一品が「モナリザ」なのだ。
ただあまり知られてはいないが、「モナリザ」は常にルーブルの花形だったわけではない。これほど人気を集めるきっかけとなったのは、100年ほど前にヨーロッパのみならず全世界の注目を集めた盗難事件だ。
1911年8月20日日曜日の晩、3人組の泥棒がルーブルに侵入し、芸術品の保管庫に隠れた。
翌朝、3人は美術館が開く前に「モナリザ」を壁からはずし、さらに防護枠もはずすと、枠を毛布で覆った。それから誰にも見られずに姿を消した。
その日は騒ぎにならなかった。というのも、誰も「モナリザ」が消えたことに気づかなかったからだ。ルーブルの内部をデッサンしていた画家が「モナリザ」がないことに苛立ち、文句を言ったことで事態が発覚したのは28時間後のことだ。
空っぽの壁に
見学者が殺到
「モナリザ」の盗難は世界中のメディアが報じた。
『ニューヨーク・タイムズ』紙は「60人の捜査員が盗まれた『モナリザ』を捜索。フランス国民は激怒」と報じた。数日後にルーブルが観覧を再開すると、それまで「モナリザ」が掛かっていた空っぽの壁に見学者が殺到した。