一番声の大きい者は、往々にして一番間違っている。たとえばジム・クレイマーはアメリカの金融ニュースチャンネル、CNBCの花形キャスターとして20年以上にわたり、景気や市場の状況に基づいて日々どの銘柄を売買すべきか推奨してきた。
これほどの専門知識や人脈を持つウォール街の象徴のような人物なら、パフォーマンスでS&P500を上回っているのではないかと思うだろう。
だが現実には、クレイマーは市場に勝ってはいない。数年前のある研究では、ジム・クレイマーが設立した投資ファンドの過去15年のリターンは65%であったのに対し、同期間のS&P500のリターンは70%だった(注2)。
出典:Josh Brown, “Why I don’t wake up to the news,” there-formedbroker.com, June 4, 2019.出典:Jennifer Booton, “Jim Cramer doesn’t beat the market,” MarketWatch, May 16, 2016.
つまりクレイマーがあれだけのエネルギーを注ぎ、何千件もの分析を重ね、有力な情報源に数えきれないほど電話をかけたにもかかわらず、投資家は彼にお金を預けるより単にアメリカの主要500社の株価と連動するETFを保有していたほうが儲かった計算になる。
ニュースアプリの通知は
今すぐオフにせよ
市場が下落すると、メディアはすぐに災害モードに突入する。そして私たちは「ウォール街の大虐殺」「市場の暗黒の一日」「あなたのお金を守る3つの投資法」といった記事をこれでもかというほど見せられる。
作家で投資家のジョシュ・ブラウンは、25年近いキャリアのなかで市場の有為転変を何度も経験してきた。そんなブラウンは投資家にこうアドバイスする。スマホのニュースアプリの通知を今すぐ、すべて、オフにせよ。
「ニュースアプリはあなたをスマホのホーム画面から自分たちの世界に引きずり込むように設計されている。広告を見せ、あなたの行動を測定するためだ」とブラウンは書いている。
「あなたが注意すべきはニュースではなく、あなたを人生から引っぺがし、彼らの術数に引きずり込もうとするトラップだ。通知をオフにしよう(注3)」
出典:Josh Brown, “Why I don’t wake up to the news,” there-formedbroker.com, June 4, 2019.
そんなことをしたら運用のパフォーマンスが落ちるのではないかと不安を感じた人こそ、一番スマホと距離を置くべきだとブラウンは言い添えている。