「モナリザ」の行方は2年以上もわからなかった。ようやく3人組の泥棒の1人、ビンチェンツォ・ペルジアがフィレンツェの美術商に鑑定に持ち込み、逮捕された。フタを開けてみると、泥棒は「モナリザ」を熟知していたことがわかった。絵を守るはずの防護枠のガラスを取り付けた人物だったのだ。ペルジアには懲役8カ月の判決が下った(注1)。
出典:“The Theft That Made The ⁓Mona Lisa’ A Masterpiece,” NPR, July 30, 2011.
当然ながら泥棒たちは転売しやすいように一般には知名度が低く、ただし芸術的価値は高い作品を狙った。盗難事件はメディアでセンセーショナルに報じられ、「モナリザ」はたちまちルーブルの中心的存在となった。
「モナリザ」盗難事件の教訓は、優れたストーリーには世界を変える力があるということだ。
投資家には悪影響!?
メディア報道に右往左往するな
メディアの報道が「モナリザ」の評価にそれほどの変化を引き起こせるなら、財産を増やしたいと思っている投資家の脳にどんな影響を及ぼせるか想像してほしい。
ほぼすべての投資家がニュースに関心を持っている。目的は危険なサインをキャッチすること、市場の現状を把握すること、そして今後何が起こるかをイメージすることだ。
ただ投資の観点からいうと新聞を読んだりテレビをつけたりといった行為は、資産を増やすより減らしてしまう可能性が高い。
最新の経済情勢に精通していれば金持ちになれるのなら、ジャーナリストはみな大富豪になるはずだ。親愛なる読者のみなさまにこっそり教えよう。ジャーナリストたちはまったく富豪などではない。
確かに経済ニュースはおもしろいし、資産運用に関する記事は私たちの人生に影響を及ぼすかもしれない。
だがボーイングの受注が予想を上回っただとか、ネットフリックスがここ3カ月で欧州連合域内のサブスク会員を新たに500万人獲得したとか、アップルが中国で地歩を固めるのに苦労しているといった情報は、投資家としての私たちに何の役にも立たない。