東京商工リサーチによると、2024年1~9月のラーメン店の倒産状況は47件で、過去最悪。5人以下の小規模店舗が倒産しており、ラーメンで一獲千金の夢は厳しくなっている。一方で原材料費の高騰が続き、「1000円の壁」を超える1杯1000円以上のラーメンも増えてきた。これからのラーメン店はどうすれば生き残れるのか?高級化に賭けた経営者に話を聞いた。(サイエンスライター 川口友万)
ラーメン店の高価格化が
避けられない事情
ラーメンの高級化に触れる前に、まず高価格化がなぜ起きているかについて解説したい。輸入品が軒並み上がり、光熱費が上がっている以上、価格に転嫁されるのは仕方がないだろう。大手コンサルティングファームの食品担当者は次のように話す。
「豚肉の価格が高いですね。餌が全部輸入なことが背景にあります。それと、ガス代。ラーメン店と同じような業態では蕎麦屋がありますが、蕎麦のつゆは煮込まないから光熱費が安いんですよ」
ラーメン店は業態として市場の価格変化に弱い。ラーメン店はこの1~2年で、原材料と光熱費を合わせると原価が30~40パーセント上がっているという。人件費にしても、蕎麦屋やうどん屋は家族経営が多いが、ラーメン店は企業経営が多い。本来は原価上昇分を価格に反映させるべきだが、ラーメン一杯1000円を超えられないという「1000円の壁」が邪魔をする。
「あと、意外と回転率が低いですね。飲食業の多くはアルコールで儲けるものですが、ラーメン店の場合、多くの客はアルコールといっしょには食べません」
1000円の壁を超えられないなら、アルコールとどう組み合わせて単価を上げるかを考えないといけない。そうでなければ原価が上がっている今、ラーメン店は非常に厳しい経営を迫られることになる。
「ラーメンは一つの丼で食事として完結します。アルコールを消費させるには、1杯の量を減らすとか、つまみになるようにあえそばにするとか、工夫が必要でしょう。日本人は職人気質でいいものを作れば売れると信じているところがありますが、どこでどうやって儲けるかを考えるべきです。ラーメン業が『ラーメン道』になってしまうと経営破綻しかねません」