有名ラーメン店、老舗料亭、獺祭の旭酒造が
コラボした新しいスタイルの飲食店

 有名ラーメンチェーンのAFRIと京都の老舗料亭下鴨茶寮、獺祭の旭酒造株式会社がコラボレーションしたのが「京AFURI SAKE & RAMEN by SHIMOGAMOSARYO」だ。

『京AFURIラーメン 鯛の潮仕立て』『京AFURIラーメン 鯛の潮仕立て』1100円~。トッピングを加えると1980円。低温で炊いた鯛の出汁は極めて上品で、ラーメンというより新ジャンルの麺料理だ(筆者撮影)

 コースではなくアラカルトの和食と締めにラーメンという店で、ラーメンだけを食べるという雰囲気ではない。京料理をつまみながら酒を飲み、締めにラーメンというスタイルだ。

つまみとして用意されている下鴨茶寮の京料理下鴨茶寮の京料理がつまみとして用意されている(筆者撮影)

 オープニングイベントでコラボレーションした旭酒造社長の桜井一宏氏によれば、海外のラーメン店にはこのようなスタイルが先行しているという。

「日本のラーメン店ではラーメン以外は、餃子、ビールぐらいしか売れないですよね。ところが、香港やシンガポール、アメリカなど、海外のラーメン店を見ると、サイドメニューが多いんですね」

 海外ではラーメン店と和食専門店の区別がなく、客はラーメン店をレストラン的な使い方をするのだそうだ。前菜的な食べ物を頼み、メイン料理、締めにラーメン、最後はデザートまで食べる。

「海外の方は、ラーメン店にラーメンではなく和食を食べに行っているんです。日本酒も召し上がりますし、滞店時間も大変長い。そこで、これまでのラーメン屋ではなく、お酒を飲みながらつまみをいただいてもらい、最後にラーメンで締めるという新しい業態に共感したのです」

「京AFURI SAKE & RAMEN by SHIMOGAMOSARYO」の店のスタイルは純日本風に見えるが、実は海外からの逆輸入なのだ。ラーメンはファーストフードと思われがちだが、海外ではスローフードだと桜井氏は語る。

「アメリカがわかりやすいんですが、ラーメンを1時間半ぐらいかけて食べます。おいしいタイミングでたべていただきたいというのはありますが、会話を楽しんだり、店の空気を楽しんだりしながら、ゆっくり召し上がっています。そういうスタイルもありかと」

 食べ方がスロー?まあそれはともかく、海外の人にとってラーメンは急いで食べるものではないというのは、日本人には驚きだろう。

「おいしいラーメンを出したいという思いがあっても、おいしさはどうしても原価に跳ね返ってきます。AFURIさんは本当にラーメン作りに真剣に取り組んでいて、一枚一枚紙を積み重ねるように少しでも価値をつけて、おいしいラーメンを提供したいと努力されてきました。もちろんお酒も飲んでいただきたいですね」

 これからのラーメンのスタイルは、もしかしたら寿司やそばのように変わっていくのかもしれない。郊外の大型店舗などでは今まで通りに早く安く提供する一方、都市部ではそば屋のように会席スタイルで提供する。ラーメン店の倒産が急増しているのは、ラーメン業界が進化するための「生みの苦しみ」なのかもしれない。