提携医の“意外な”役割

――そこまでしっかりやっているホームは、実際どれくらいあるんでしょうか?

田村:残念ながら1割か2割程度でしょう。「看取りをしています」と回答するホームは、アンケート上では6~7割に上りますが、実際にそこまで丁寧な配慮をしている施設は少ないです。多くの施設では、「部屋で亡くなったら看取りをした」と認識しているだけの場合が多いですね。

――提携医のかかわりは?

田村:基本的に、提携医が直近1週間以内に診察していれば、死亡診断書を書くことができます。しかし、それ以上間が空いていると警察の介入や解剖が必要になる場合があります。

――葬儀社と提携している施設も多い?

田村:ほとんどのホームが葬儀社と提携しています。「うちはこの葬儀社を紹介できます」と事前に家族に伝えるケースが多いですね。家族は突然のことに慌ててしまうので、そのまま提携先にお願いすることが一般的です。

“身元保証会社”の闇

――身寄りがない人はどうなるのか?

田村:ホームに入居する際には、基本的に身元引受人や連帯保証人を立てることが求められます。ただし、身元引受人を立てられない人もいるので、その場合は第三者の法人と契約するケースがあります。

――施設側が身元保証会社を紹介してくれる?

田村:そうです。ただし、悪質な会社もあるので注意が必要です。過去には、亡くなった入居者に遺言を書かせて、遺産の大部分を寄付させる仕組みを作っていた会社もありました。この会社の決算書を取り寄せて調べた結果、収入の8~9割が寄付だったことが分かりました。

――それでも身元引受人になってくれるなら、独り身の人にとってはありがたいと思うのかもしれません。

田村:そうですね。実際、そういった状況で契約する人も多かったです。さすがに評判の悪い会社はホーム側でも排除する動きがありますが、利用する前にその会社が信頼できるかどうかをしっかり確認する必要がありますね。

田村明孝(たむら・あきたか)
株式会社タムラプランニング&オペレーティング代表取締役。「高齢者住宅支援事業者協議会」事務局長
1974年に大学卒業後、ケア付き高齢者マンション開発会社に入社。神奈川県横浜市などにケア付き高齢者マンションの開設を手掛ける。1987年に株式会社タムラ企画(現タムラプランニング&オペレーティング)を設立、代表取締役に就任。高齢者住宅の事業計画立案及び実施・運営・入居者募集等、一連の実務に精通したコンサルタントとして活躍。市町村の介護保険事業計画などの福祉計画策定をはじめ、老人福祉施設や有料老人ホームの開設コンサルや経営改善コンサルに力を入れ実践している。テレビ、新聞、雑誌など各種メディアへの出演実績多数。