雑煮:年神様の下がりものの餅で恩恵をいただく
雑煮とは、もともとは年神様に供えた餅を神棚から下ろし、それを野菜や鶏肉、魚介などと一緒に煮込んだもので、「雑煮餅」ともいいました。
元来、雑煮は正月用ではなく、室町時代のころの儀礼的な酒宴などで出されたのが始まりです。最初に雑煮を食べて、胃を安定させてから酒宴に移るという前菜の役割を果たしていました。それが、やがて正月料理になったといいます。
雑煮は、地域によって作り方に特色があります。関西では白みそ仕立て、関東ではしょうゆ仕立て(すまし仕立て)で、なかに入れる餅の形も関西では丸餅、関東では切り餅(のし餅、角餅ともいう)が一般的です。
お年玉:貴重なお餅を年少者に分配していたのが始まり
お年玉とは、もとは年神様からの贈り物を意味し、年神様に供えた餅を下ろし、年少者に分け与えたのが始まりともいわれます。地域によっては、年神様に扮装した村人が元旦に各家を回り、子どもたちに丸餅を配って歩く習わしがありました。この丸餅を「年玉」と呼んでいました。
ちなみに、お年玉は、年少者や自分より地位の低い人に贈るのに対して、お年賀は、お世話になっている人や目上の人、地位の高い人に贈るのが基本です。
七草がゆ(春の七草):一年の健康を願いつつ疲れた胃腸を休める
正月七日の朝は、「七草がゆ」を食べて無病息災を願う風習がいまでも残っています。
もともとは中国で、毎年1月7日に官吏(かんり)昇進を決めることから、その朝、薬草である若菜を食べて立身出世を願ったのが起源といわれます。
この行事が日本に伝わると、平安時代には宮廷の儀式として七草がゆを食べるようになりました。さらに江戸時代には「五節句」の一つである「七草の節句」(人日(じんじつ)の節句)に食べる行事となり、一般に定着しました。
七草がゆに入れる若菜は、セリ、ナズナ、ゴギョウ(ハハコグサ)、ハコベラ(ハコベ)、ホトケノザ(タビラコ)、スズナ(カブ)、スズシロ(大根)が、春の七草といわれ一般的です。お正月のご馳走で疲れた胃腸を休め、栄養補給をするという効用もあります。