14日、北九州市小倉南区のファストフード店で、中学生の男女2人が刃物で刺されて、15歳の女子生徒が殺害され、男子生徒がけがをするという痛ましい事件が発生した。こうした殺傷事件は、いつどこで起きてもおかしくない。自分や大切な人の命を守るためには、事前に知識を持っておくことが肝心だ。「刃物を持つ人間から身を守る方法」について、一般的な対処法を解説した後に、7つのシーン別に実践的な解説を加えました。(文/セキュリティコンサルタント 松丸俊彦)
刃物を持つ人間と遭遇…
生死を分ける「初動」
刃物を持った人間を前にすると恐怖で頭が真っ白になる人がいます。そうなったときは、現場で状況に応じた判断などできません。したがって、危機対応はできるだけシンプルなものである必要があります。
本稿では、「ここだけは頭に入れてほしい」という要点を下線で強調しています。下線部分を意識して頭の片隅に入れるように読んでいただくと、万が一の際に使える知識となるはずです。
刃物から身を守る初動について、私が以前書いた記事「刃物を持った人間と遭遇したとき、生死を分ける「初動」とは?」に詳しいので参考にしてください。ここでは、そのエッセンスのみを取り上げます。
警察官は至近距離から刃物で急襲されたときの対処法を訓練をします。そこで徹底的に叩き込まれる初動は、モノで犯人の刃物を叩くことです。
モノというのは、外出先では身につけているバッグや買い物袋などです。交番では、机の上にメモ板が置いてあることが多いのでそれらが使えます。
初動で最優先されるのは、相手の第一撃を防ぐことです。したがって、ここでの叩くという動作は攻撃ではなく防御を目的とします。
その際に、攻撃の軌道から自分の体を外すことが重要です。とても高度な動きの話になりますが、凶器を叩きながら自分の体を犯人に対して閉じることで、正面(胸)を見せないようにすると攻撃を受ける確率が下がります。
相手の第一撃を交わしてもまた襲ってくる場合、基本的にはこの動きを繰り返すことになります。よほど武道の修練を積んでいる人でない限り、打突や投げで相手を制止しようとしないほうがいいでしょう。かえって危険です。
私は警察官で武道経験があるので、いざとなったらタックルなどで相手を制止することも考えますが、一般の方は控えてください。
アメリカの国務省が出しているテロ対策では「ラン(Run)・ハイド(Hide)・ファイト(Fight)」という原則が掲げられています。まず、走って逃げる、次に隠れて身の安全を確保する、そして、最終手段として戦うとしているのです。犯人検挙や正義のためにファイトすることは、絶対にやめてください。
あくまで何もしなければ座して死を待つのみという状況になった場合のためのファイトです。まずは逃げることを考えてください。
犯人に遭遇した瞬間に絶対にしてはいけないことが2つあります。