ベストセラー『「悩まない人」の考え方』著者の木下勝寿氏が「マーカー引きまくり! 絶対読むべき一冊」と絶賛する本がある。『スタートアップ芸人 ── お笑い芸人からニートになった僕が「仲間力」で年商146億円の会社をつくった話』だ。著者の森武司氏は、2005年の創業以来、18年連続増収増益を達成し、年商146億円となった。ここまで会社を成長させてきた秘密は何か? 本書からより深い学びを得ようと、インタビュー企画を実施。今回インタビューするのは、株式会社パルファンの代表取締役社長の藤井英一氏。創立40年を迎えた同社は、女性用下着やスポーツウェアの製造・販売を手がけ、藤井氏は国内外を飛び回り経営を支えている。そんな藤井氏は、『スタートアップ芸人』をどう読み解いたのか。今回は藤井氏が実践する「仲間力」について、奥様の存在を交えながら掘り下げる。(構成/ダイヤモンド社書籍編集局)

社員も驚愕! 社長が奥様から“ビシバシ叱られる”すごい会議の秘密Photo: Adobe Stock

「世界で一番、奥さんに仕事の話をする」

――『スタートアップ芸人』の中で、「世界で一番、奥さんに仕事の話をする」という章に共感されたと伺いました。藤井さんは奥様とは、どのようなご関係ですか?

藤井英一(以下、藤井):妻とは結婚して40年近くになり、私のことを何でも知っている存在です。社員は立場上、社長の私に思っていることを言いにくいこともありますが、妻は遠慮せずに指摘してくれるので、とても助かっています。

――奥様からはどのような指摘があるのでしょうか?

藤井:会社の会議に妻を招くことがあるのですが、私の社員に対する言動をチェックして、指摘してもらっています。

妻も私も「社員を育てることは子育てと同じ」という共通の考えを持っています。社員に対して愛情を持って育てなければ、きちんと成長しませんし、厳しく指摘ばかりしてしまったら、社員も不安になります。妻は会議の様子を見て「そんな傲慢な態度はあかんよ!」というように私に教えてくれます。妻は細かいことは言いませんし、儲けろとも売上を上げろとも言いません。私の言動を見て、必要だと思ったことだけを教えてくれています。

――奥様が会議に参加されて、社員の反応はいかがでしたか?

藤井:最初は驚いていましたね。ただ、妻が遠慮なく意見を言う姿を見ることで、社員たちも意見を言いやすい雰囲気ができたと思います。妻の視点が会議に新しい風を吹き込んでくれています。

「鏡」となる存在の価値

――奥様が会議に参加するきっかけは何だったのでしょう?

藤井:妻は会社の役員で株主でもあるため、会社のことを理解してほしいと思ったのがきっかけです。

妻が参加する前の会議は、私の独断偏向で進んでいました。それをどうにかしなければと思っていたタイミングでもあったので、妻に参加してもらう提案をしてみたんです。すると、社員からも「そのほうがいいですね」とポジティブな意見をもらえたので、それ以来、妻が時々会議に参加するようになりました。

――会議は最初からスムーズに進んだのでしょうか?

藤井:正直なところ、妻が会議に参加してもスムーズにいかずに1回だけで終わると思っていたんです。ところが、実際に参加してもらうと、妻に「ようそんなんで経営できるな!」と厳しく叱られました。もちろん、たくさん指摘されるのは正直嫌ですが、受け入れて変えていくことも大事だとその時思ったんです。社員が言いにくいことも妻はズバッと言うので、結果的に非常にありがたい存在になりました。

――部下の前で奥様に叱られるのは、かなり辛そうですね。

藤井:お客さまに怒られるのとは違い、妻の言葉は心に刺さります(笑)。最初は「もう勘弁してほしい」と思いましたが、妻の指摘は筋が通っているので、受け入れることで自分も変わることができました。妻は言わば私の“鏡”です。

自分が良かれと思ってやったことでも、部下には伝わらないことがあります。そんな時でも、私の”鏡”として厳しく妻が指摘してくれるので、自分を変えやすくなりました。

元々社員との距離は近いと思っていましたが、妻が関わることで私が周りの意見を柔軟に聞くようになり、社員も驚いていました(笑)。妻のおかげで、社員たちともより強い信頼関係が築けていると思います。

――奥様は藤井さんにとって一番の理解者ですね。

藤井:そうですね。酸いも甘いもいろんなことを妻は知っているので、文句を言わずに応援してくれています。仕事が忙しく、子育てに十分関われなかったことは、今でも申し訳なく思っています。ただ、その分、妻の支えがあったからこそ、ここまで会社を成長させられたと感謝しています。

『スタートアップ芸人』でも、家族を仕事の仲間にするヒントが詰まっていると感じました。仕事と家族の関係に悩んでいる人にとって、参考になる書籍だと思います。

(本原稿は、森武司著『スタートアップ芸人 ―― お笑い芸人からニートになった僕が「仲間力」で年商146億円の会社をつくった話』に関連した書き下ろしです。)