社長は怒り「クビにしろ!」と……
朝礼終了後。A部長はすぐにB課長を呼び、連れだって応接室に入るなり
「B君、さっきのはいったいどういうことだ」
と言った。
「だから朝礼で話した通りです」
「じゃあ、課長を辞めたい理由は何だ」
「自分は課長の器じゃないんです。C主任に代わってもらって下さい。彼は優秀だからきっと務まるはずです」
B課長はそれ以上理由を話そうとはせず、「とにかく辞めたいんです」を繰り返した。A部長は「辞めたい理由がわからないと対処のしようがない」と言い、一旦B課長を席に戻した。
午後、甲社長が社長室に入ると、暗い顔をしたA部長がぽつんと立っていた。
「いやーっ、朝から妻と大喧嘩したせいで遅くなってしまったよ。あれ、おまえどうしたんだ。新年から浮かない顔をして……」
「実はB課長が、朝礼中に突然『課長を辞めたい』って言いだした」
「何だって!」
甲社長は驚きのあまり、椅子から立ち上がった。
「で、理由は?」
「それがわからない。いくら尋ねても答えようとしない。悩みがあるのなら事前に相談してくれたらよかったのに、いきなりメンバー全員の前で宣言しちゃったから。このまま課長を続けてもらうわけにもいかないし。どうする?」
「どんな事情か知らないが、いきなり課長職を放棄するとは許せん。そんなやつはクビだ、クビにしろ。後はおまえに任せるから」
次の日の朝、A部長は再びB課長と面談し、課長を辞めたい理由を尋ねたが、昨日と同じ答えだった。
「社長に君のことを話したらすごく怒って『クビにしろ』って言ってた。……それでもいいの?自分は君に会社も課長も辞めてほしくない。だから理由を聞きたい」
それでもB課長は黙って下を向いたまま。困ったA部長はD社労士に相談することにした。
管理職を辞めたくなるのはどんな時?
夕方、甲社を訪れたD社労士に経過を説明すると、A部長は重いため息をついた。
「せっかく課長になったのに、1年もたたないうちに辞めるなんてもったいないと思うんですが……。これは他の会社でもよくあることなんですか?」
「管理職から専門職に戻るなど、私が顧問をしている会社でもたまに話を聞きますね」
「一般的に管理職を辞めたくなるのは、どんな理由ですか?」