恩知らずばかりだから
感謝がチャンスになる

 残念な事実として、過去、どれだけその人のために骨を折ってサポートしてあげたとしても、「やってもらった人」の多くは、それをすぐに忘れてしまいます。一方、逆に「やってあげた人」は、意外にそのことを忘れないものです。逆だったら皆幸せなのですけどね。

 例えば仕事だと、上司として部下にいろいろ教え、育ててあげたとしても、時が経つと(それも結構早い段階で)、サポートしてもらったことをすっかり忘れ、自分だけで成し遂げた…と、歴史を勝手に修正していくものです。サポートする側は、そんなもんだと諦めるしかありません。

 もちろん、それで片付けるつもりはありません。多くの人間が、「無意識的な恩知らず」だからこそチャンスと捉えます。つまり、過去誰かにサポートしていただいたことをしっかり覚えておき、それに感謝の気持ちを伝えることで、相手に対してポジティブな印象を強く残すのです。これを意識的にやっている人はあまりいません。だからやる価値があるのです。

 そして期待できる効果としては、相手から好意を持たれるというだけではありません。「また、この人をサポートしてあげたい」という気持ちにもつながるのです。

第三者づてに伝える
「間接攻撃」の効果

「過去にしてもらったこと」を思い出すための切り口例

○自分を指導してくれたこと
●「以前に○○さんに鍛えてもらったことが、今の仕事に繋がっています」

○自分のために、ひと肌脱いでくれたこと
●「以前、○○のようによくしてくれたことを今も忘れていません」

○苦しいときに、支援してくれたこと
●「あの大変な状況のとき、助けてくれたことをずっと感謝しています」

○無理なお願いを聞いてくれたこと
●「あのとき、無理なお願いを聞いてもらったから、今があると思っています」

 ここで、方法(1)と(2)の応用技をご紹介します。それは、私が「間接攻撃」と呼んでいる技法で、第三者づてに、ある方へのリスペクトが、自然に伝達されることを狙う方法です。イメージとしては、第三者から以下のような感じで伝わることです。

●「この前△△さんが、○○さんのこと、めっちゃ尊敬しているって言ってたよ」

●「○○さんのことを目標にしているって、△△さんが言ってましたよ」

 これは、行動経済学の「ウィンザー効果」(ある事柄について、当事者が自ら発信するよりも、他者を介して発信された情報の方が、信頼しやすいという心理)を活用した方法です。つまり、人は第三者からの言葉に弱い、ということ。皆様も、第三者づてに自分が褒められていることを聞いて、とても嬉しく感じた経験はありませんか?