2022年初め、カナダの政界は「フリーダム・コンボイ」と呼ばれる抗議活動を非難する姿勢でほぼ一致していた。このデモでは、新型コロナウイルスワクチンの接種義務化に反対するトラック運転手らが首都オタワへの輸送ルートを遮断した。だが、野党・保守党のピエール・ポワリエーブル氏の姿勢は政界の大勢とは異なっていた。
ポワリエーブル氏(45)はカナダの主流派政治家とは一線を画し、トラック運転手らを支持した。同氏はロックダウン(都市封鎖)やワクチン、マスク着用義務などを巡る運転手らの反発に乗じ、ジャスティン・トルドー首相は尊大なエリート主義者であり、庶民感覚から乖離(かいり)しているとの主張を展開した。こうした批判は、トルドー氏が6日に辞任の意向を表明するまで続いた。
ポワリエーブル氏は、トルドー氏に対して高まる国民の不満を背景に、2022年後半に保守党の党首の座を獲得し、次の総選挙では首相の座を狙っている。最近の世論調査では、ポワリエーブル氏率いる保守党は支持率でトルドー氏の自由党を29ポイントリードしている。
カナダの法律では総選挙は今年の10月までに実施することになっている。
トルドー氏が首相を退くことになり、ポワリエーブル氏には自身が単なる反トルドー候補ではないことを証明する必要がある。また、これまでカナダでは珍しかったポワリエーブル氏の好戦的な政治スタイルが、他の指導者との対決で有権者の支持を得られることも示さなければならない。
議会でポワリエーブル氏は押しの強さと鋭い弁舌、また、カナダの政治的慣習を意に介さないことで知られている。同氏は500ポンド(約230キロ)のタイヤをひっくり返したり、75ポンドの重りを載せたそりを引きながら坂道をダッシュしたりするといった、激しい筋トレを自慢している。
陽気なトルドー氏とは対照的に、ポワリエーブル氏は気性の荒さを見せることがある。2023年のインタビューでは新聞記者の質問に対し、りんごを頰張りながらつっけんどんに答えた。その様子は支持者の間で話題になったものの、政治評論家の間では中道派の有権者には逆効果になる可能性があるとの指摘もあった。