首都圏は、近畿地方と東海地方の間で推移しており、おおむね「その他の地域」と同じくらいの水準である。ただし、首都圏は、「その他の地域」に比べるとバブル崩壊直後の失業率上昇のタイミングが早く、ピークを越えた後の回復もやや早い。3大都市圏を含まない「その他の地域」と首都圏の動きが似ている一方で、東海地方と近畿地方が両極端の動きをしており、単純に大都市圏と地方といった対比はできないことがわかる。
就職氷河期の影響は
近畿地方が最も深刻化
不況そのもののインパクトの違いから、就職氷河期世代に与えた影響も、近畿地方が最も深刻であり、東海地方は比較的影響が小さいことが予想される。
首都圏、近畿、東海、その他の地域のそれぞれで、コーホートごとの正規雇用比率や年収の84年卒からの乖離を計算してみた。煩雑になるので図表は割愛するが、バブル世代と就職氷河期世代の格差は、近畿地方では他の地域より大きく、東海地方では小さい傾向が確認できた。
一方、失業率の推移が似ていた首都圏とその他の地域の間には、多少の違いが見られた。まず、大卒男性を見ると、首都圏ではバブル世代と就職氷河期世代の年収格差は比較的小さい一方で、正規雇用比率の格差は首都圏のほうがその他の地域より大きかった。
高卒男性は首都圏とその他の地域の間に目立った差はなく、大卒だけに傾向の違いが見られたのは興味深い。推測ではあるが、新卒採用で大卒を主に採用するような大企業が首都圏に多く存在し、そうした企業が採用数は減らしたものの給与はあまり下げなかったため、こうした違いが生じたのかもしれない。
女性に関しては、既婚率や既婚女性の就業率にも地域差があり、それが世代とともに変化しているため解釈が難しくなるが、男性ほど東海と近畿の差ははっきりしておらず、首都圏とその他の地域の動向を含めて、系統だった地域差は確認できなかった。
就業状態や年収の地域格差
世代によって変化はあるか
切り口を変えて、卒業後しばらくしてからの就業状態や年収の地域間格差が、世代によってどのように変化してきたかを見てみよう。
図5-2は、高卒と大卒の男性について、卒業後7~9年目における、首都圏・東海・近畿の各地域とその他の地域の差を図示したものだ。バブル世代、氷河期前期世代、氷河期後期世代、ポスト氷河期世代の4つの世代の男性の、就業率、正規雇用比率、無収入の人を含む平均年収、フルタイム雇用者の平均年収の4つの指標について、それぞれグラフにした。