また、無収入を含む平均年収の地域差はポスト氷河期世代でさらに拡大する傾向があるのに対し、フルタイム雇用者の年収格差は少し縮小している点も興味深い。この時期に都市部の就業率や正規雇用比率が相対的に上がったわけではないので、ポスト氷河期世代では非正規雇用者の年収の地域差が拡大した可能性が示唆される。

 このように、就業率や正規雇用比率にははっきりした傾向がないのに、年収の地域差だけが就職氷河期世代で拡大した理由は、はっきりとはわからない。この時期の消費者物価地域差指数の大都市と全国平均の差は目立って変化しておらず、物価の地域差が拡大していたわけではなさそうだ。一つ考えられるのは、大企業の正社員の賃金体系が硬直的であるため、大企業の多い都市部の、特にフルタイム雇用者の賃金が相対的に下がりにくかった可能性だ。

 なお、女性についても同じ図を描くことはできるが、女性の場合、既婚率の変化にも地域差があり、これが就業率や正規雇用率にも影響してしまうため、解釈が難しくなる。具体的には、バブル世代では首都圏や近畿地方で女性の既婚率が全国平均に比べ高かったのが、若い世代になると差がなくなったり逆転したりする一方、東海地方だけはもともと全国平均よりも高かった既婚率が若い世代でさらに相対的に上昇しているのだ。

 このため図5-2は男性のみに限定したが、既婚率の影響を受けにくいフルタイム雇用者の年収については、男性同様、氷河期後期世代で格差が最大になる傾向が見られた。