「いつも気を使い過ぎて、心が疲れてしまう」「このままで大丈夫なのか、自信がない」と不安になったりモヤモヤしてしまうことはないでしょうか? そんな悩みを吹き飛ばし、胸が晴れる気持ちにしてくれるのが『精神科医が娘に送る心理学の手紙――思い通りにならない世の中を軽やかに渡り歩く37のメッセージ』です。悩む人たちに40年以上向き合ってきた精神科医が、自分の娘に「どうしても伝えたかったこと」を綴った本書は、韓国で20万部を超えるベストセラーとなりました。本記事では、その内容の一部を紹介します。
いくらSNSを眺めても寂しさを埋めることなんてできない
最近の人たちは、政治的なメッセージはX(旧ツイッター)に、グルメと旅行はインスタグラムに投稿するといった具合に、ひとりで複数のアカウントやSNSを使い分けているとか?
ひとりでいくつもの顔を使い分けるなんて、まるで「マルチペルソナ」だ。
マルチペルソナはユングによるペルソナ概念で、「人はその時々の状況に合わせていくつもの仮面を使い分ける」というものだ。
昔なら、あちこちでいい顔をする人間は周りから後ろ指を指されたものだけど、最近は顔がいくつもあるのが当然だと受け入れられているのだね。
スマートフォンと、そこから派生した文化を自在に操っている若い人たちを見ると、確かに今までの人類とは違うかもしれないと思う。
スマートフォンとSNSは人間関係の結び付きを大きく変えた。
自己開示を強要されないから、関係を結ぶことのハードルを下げ、好きな方法で人と出会い関係を維持できるようになったのだ。
フェイスブックが人気だった10年ほど前の調査だが、西江大学のコミュニケーション学科で韓国のフェイスブックユーザーを対象に調べたところ、フェイスブックの友達の平均は331人、うち、実際に付き合いのあるリアルな友達は24人だったという。
300人以上も友達がいれば、メッセージや情報、写真が引っ切りなしに飛び込んでくるだろう。まさに関係があふれかえる時代だ。
確かにSNSなら関係を結ぶのも簡単。
相手との関わり方に悩まされるリアルな付き合いとは違い、スタンプで手軽に感情を伝えられるし、適当なところで会話を終えてもかまわない。気が向かないときは自分の存在を隠すこともできる。
SNS上では、自分の気に入らない部分は隠し、納得している部分だけをピックアップした「なりたい自分」を作り上げて公開することは珍しくない。
イギリスの市場調査会社ワンポールが実施した調査によると、女性の25%が、「月に1~3回、SNSで自分の人生について誇張したりうそをついたりしている」と答えた。
他人に「私は幸せ」と見栄を張るために、好み、知識、人脈などを“盛る”というわけだ。
そして主におしゃれな旅先の写真やすてきなレストランに行った経験談を投稿する。当然、みすぼらしい日常生活など公開禁止だ。
湖を優雅に泳いでいるように見える白鳥が水面下では必死に足をバタつかせているように、SNSも、見栄えの悪い水面下の日常は隠し、おしゃれでクールな姿だけを見せている。
お互いに一生懸命「いいね!」を押し合っても、本当の姿は見せられないという事実。
人々が感じている寂しさは、そこから来ているのだろう。
(本記事は『精神科医が娘に送る心理学の手紙――思い通りにならない世の中を軽やかに渡り歩く37のメッセージ』の一部を抜粋・編集したものです)