今度、誰かと議論になり、相手の言い分がバカげていて、非論理的で、何の根拠もないと感じたら、このルールを思い出そう。
私はなにも、自分の意見を主張してはいけないと言っているのではない。
ただ他人を説得して、意見を変えさせられるという希望は持たないほうがいいと言っているだけだ。
「自分の意見だ」と信じさせる
テクニックをさりげなく使う
<人を動かすルール>
自分のアイデアを人の手柄にする
人は自分の意見と同じものに賛成するものだ。実際のところ、「自分の意見」というよりも、「自分のものだと信じている意見」に賛成する。
つまり理論上は、「これは自分の意見だ」と相手に信じさせれば、どんな意見であっても同意させるのは可能だということだ。
この方法がうまくいけば、すべての人が勝者になれる。あなたにとっても、相手にとっても、自分の意見が通ったことになるからだ。
ただし、このテクニックはさりげなく使わなければならない。しかも、効果があるのは初期段階だけだ。あるアイデアについて誰かと大激論を戦わせてしまったら、そのアイデアを相手のものだと信じさせようとしても無理な話だ。
ある高校の理事をしている知り合いは、このテクニックの達人だ。理事会のメンバーは多種多様だが、毎回意見が割れていては、学校の経営はうまくいかない。
ここで肝心なのは、自分のアイデアを相手の手柄にすることだ。相手が提案したアイデアだと言ってしまえば、相手も「それは違う」と言いにくくなる。
相手の話をよく聞いて、説得できそうな糸口を探ろう。
たとえば、学校が規模の拡大を計画しているが、ある理事が「生徒が増えると家庭的な雰囲気が消えて、大学と同じになってしまう」と反対したとしよう。
あなたは、こう答える。
「おっしゃる通りです。生徒が成長するには、広い世界に目を向けて、大学に備えなければなりませんね。その視点がありませんでした。ありがとうございます」
または、こんな言い方もある。
「あなたの意見を聞いて、このアイデアのよさに改めて気づいたんです」
「それは本当にいいアイデアですね。それなら、こうも考えられませんか?」
相手に思い通りの言葉を言わせることはできないが、相手の発言をふくらませることはできる。
このテクニックを使うときは、こちらの意図を悟られないように注意しなければならない。
うまくいくのは、相手が気分よく信じてくれたときだけだ。