ヒロシマでうまれた感動のショー
本物、といえば、忘れられない光景があります。
ダンサーのチームを束ねていたのは、ディズニーランドの演出を手がけているラリー・ビルマンでした。東京ディズニーランドでも、東京ディズニーシーでも、オープン時のイベントの演出を手がけたのが彼。そんなすごいプロフェッショナルが、日本の各都市を回っていたのです。
「ディズニーの映画も舞台もすべて見て、それを頭に入れながら演出を考えるんだ」
と彼は言っていました。ハリウッドやニューヨークのブロードウェイのクオリティを目指しているのだ、と。どの都市でも、クオリティのこだわりは半端なものではありませんでした。
あれは、広島に行ったときのことです。20人ほどのダンサーを全員集めて、彼は言いました。
「ここは、アメリカが原子爆弾を落とした特別な地だ」
彼は昼間、ディズニーのダンサーを引き連れて原爆ドームで献花もしていました。彼は続けました。
「そんな広島の人たちを、私たちのクオリティで満足させなければいけない。私たちの誇りとして」
本当に真剣な表情でした。
このときのショーは、本当にすばらしかった。もちろんいつもすごいのですが、このときは一番すごかった。ショーを見慣れていた私ですら、感動してしまいました。作り手が心から真剣だと、間違いなく人の心を動かすのです。
会場から割れんばかりの大きな拍手が巻き起こると、ようやくビルマンにも、笑顔が浮かびました。本当にうれしそうでした。