一方で心の境界線をしっかりと引けていれば、「私の結婚のことに口を出されるのは嫌だからやめて」「結婚相手は私が決めるから、私のことを信じて見守ってほしい」と親に立ち向かうことができます。そして、親の助言よりも自分の意志を尊重できる、まさに自分らしい人生を生きられる、というわけですね。

「誰の課題か?」を明確にすれば
誰の意志を尊重すべきか見えてくる

 では、心の境界線を引くにはどうしたらいいのでしょうか?僕のおすすめは「課題の分離」です。これは大ベストセラー『嫌われる勇気』で有名になったアドラー心理学で扱われているもので、「自分の課題」と「他人の課題」を分けて考えることです。

 何かの問題に直面した時に「これって誰の課題か?」を見分けるには、「その選択によってもたらされる責任を、最終的に引き受けるのは誰か?」を考えればいいんですね。

 もし自分が最終的な責任を引き受けることなら、それは自分の課題です。逆に、他人が最終的な責任を引き受けることなら、それは自分ではなく他人の課題です。

 こうやって「誰の課題なのか?」を明確にして、自分の課題なら自分の意志を優先して判断しながら行動すればいいというわけです。加えて、もう1つ重要なのが、他人が自分の課題に足を踏み入れようとしてきたら、それには抵抗する意志を示すことなんです。

 先ほどの結婚の話だと、結婚して幸せになろうと不幸になろうと、その最終的な責任は全て子ども自身が負うものです。万が一、親の言うとおりにして後悔することになっても、親は何も責任を取れませんよね。なので、結婚は子どもの課題であって、たとえ親から口を出されても子どもは自分の意志を優先して決めればいい。親の助言はあくまで参考程度に聞いておけばいいってことですね。

 この心の境界線を引くことはとても大事なので、僕はいろんなところで繰り返しお話ししています。そのたびに感じるのは、日本人は心の境界線を引くという考え方が非常に苦手だということです。