政府が進める「家の省エネ化」
断熱リフォームにはどのくらいの補助金が出る?

 WHO(世界保健機構)は冬の室温18℃以上を推奨しているが、日本ではそれに達していない家も多いという。室温の差は、住宅の断熱性能の違いによるものだ。1980年に初めて省エネ基準が制定されたが、この通称「旧省エネルギー基準」の家は、平成以降の省エネ基準の家に比べてかなり寒く感じる。

 住宅設備等を扱うLIXILの発表では、断熱性能が高い住宅に移った人は、気管支喘息・アトピー性皮膚炎・アレルギー性鼻炎などの症状に改善があり、建物の断熱性のグレードが高いほど改善率も高かったという。

 家の断熱化によって医療費がどのくらい変わるかを比較した研究もある。窓部分の断熱性を高める改修をした想定で30年分をシミュレーションしたところ、医療費・薬剤費(調剤薬局薬剤費)の期待値、冷暖房費の合計で、戸建て住宅では約103万円、集合住宅では約52万円の削減効果が見込める結果となった(LIXILと近畿大学の共同研究より。いずれも50代夫婦と18歳、15歳の4人家族の住宅で計算。諸条件あり)。

 窓の断熱性能を上げることは、光熱費だけでなく医療費にもプラス効果があると考えてよさそうだ。

 現在、政府は住宅の省エネ化を積極的に進めており、そのための補助制度もある。例えば、高い断熱性能を持つ窓、及びドアへの改修を促す「先進的窓リノベ事業」などだ。窓を重視するのは、ガラス部分から室内の熱の5割以上が逃げていくと言われるからだ。断熱性の高いガラスに変えたり、内窓をつけたりすることで、グンと暖かさを保てるようになる。

「先進的窓リノベ事業」では、一定の省エネ性能を満たすと確認された製品を用いた断熱リフォームに対して、費用の2分の1、上限200万円まで補助をする(合計補助額が5万円未満だと対象外)。申請は事業の事務局に登録済みのリフォーム事業者が行い、依頼主に還元する仕組みだ。戸建て、集合住宅を問わず利用できる。窓ガラスの交換や内窓設置は数時間~1日で終わる工事なので、それほど負担はないだろう。

 申請期間は2025年3月下旬から。12月31日までに工事完了したものが対象だが、補助金の性質上、予算が条件に達したら終了することもあるので注意したい。

 こうした話をすると、特に高齢者からは「今更、古い家にお金をかけるのはもったいない」という声を聞くことがある。経済的な余裕があったとしても、自分が我慢すればいいと考えてしまうのだ。しかし、安心して快適に暮らせることほど人生に重要なことはないはずだ。住環境を改善することで病気になるリスクを減らし、将来の医療費を削減できるのなら、ダブルでメリットも大きいのではないか。せっかく国や自治体が補助金を用意してくれているのだから、遠慮なくどんどん利用してほしい。