ヤクルト本社と、大株主でフランスの食品大手ダノンとの関係が緊張の度合いを増している。発端は4月末に突然、ヤクルト本社が戦略提携契約を解除すると発表したことだ。
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「ここにいる人が株を売るとインサイダー(取引)になる。株は売るな。話を聞きたくない人は出て行っていい」
3月中旬、東京・帝国ホテル。全国でヤクルトを販売する販社を対象にした定例会議が開かれた。集まった販社社長を前に、経営の盤石さを語った上で堀澄也会長はこう熱弁を振るったという。
ヤクルト本社とフランチャイズ契約を結び、配達員ヤクルトレディを抱える実動部隊である販社の中には、ヤクルト本社の株主である企業も多い。株を売る相手について直接には言わないまでも、ダノンの株式公開買い付け(TOB)には応じるな、という牽制にほかならなかった。
2004年に戦略提携契約を交わしたヤクルト本社とダノンの関係が、一気に注目を浴びたのは昨年5月のことだ。契約時に結ばれたスタンドスティル(合意なく株式を買い増さない)条項がこのとき失効、ダノンがTOBに動くのではないかとみられたため、ヤクルト本社株は高騰を続けてきた。
市場の思惑に反し、ダノンとヤクルト本社の間にさしたる動きもないまま時がたった。というのも両社の間ではその後1年を期限に今後の提携関係について協議する期間と位置付け、「その間はスタンドスティル条項が切れても手荒なことはしないようにというヤクルト本社側からの要請をダノンものんでいた」(関係者)からだ。
ダノンは12年、社外取締役を含め3人の取締役をヤクルト本社に送り、逆にヤクルト本社の川端美博副社長もダノンの取締役に就任。ダノンも株買い増しについて、ヤクルト本社の同意なしには行わないという紳士協定を守ってきた。
ところが、期限の1年が近づいたことで、ヤクルト本社側が、“曖昧な関係”に終止符を打った。4月26日に行われた役員会で、堀会長が突然、提携の解消を提案、認められたという。同日の会見で堀会長は、「経営の自主独立性をさらに確固たるものにする」と表明、ダノンへの対抗心をあらわにした。