一番いい顔をしている課長は誰か?
行きたい部署を選ぶ前に独自調査
私が生命保険会社に入社してから驚いたのは、何事も、個人の「顔つき」を見るよりも、仕事上の役職や書類に書かれたことを中心に検討・判断する人が多かったことです。
一緒に働く人の顔つきに焦点を当てて、「どういう個性や強みを持っているのか」「案件を主体的に進めることができるのか」「周囲から信頼を得ているのかどうか」「どこまで彼に仕事を任せることができるのか」といった観察眼をもって判断した方が良い仕事ができるのに、と私はずっと考えていました。
採用の責任者だったときも、目の前にいる就活生が「いい顔をしているかどうか」が、採用可否の基準でした。人事申告書に次の希望部署を書く際には、「本部で一番『いい顔』している課長は誰か?」を社内にヒヤリングしたこともあります。
また、40代後半に会社を休職するに至った動機は、このままの一本道では「いい顔」で過ごすことはできないと感じたからです。実際に、社内でエリートと目されている人達の顔つきは、会社人間特有の息苦しさが垣間見えて、私には必ずしも良いとは思えませんでした。
50歳からの自分の生き方のヒントを求めて始めたインタビューでも、その人に話を聞くかどうかは、やはり「いい顔」が基準だったのです。
ジャーナリストの大宅壮一は「男の顔は履歴書」と言い、アメリカの大統領を務めたリンカーンは「男は40歳を過ぎたら自分の顔に責任を持て」と言いました。大宅壮一やリンカーンは、そのキャリアを表すのが「顔」であることをよく理解していたのでしょう。
また、アカデミー賞で「メーキャップ&ヘアスタイリング賞」を2回受賞した美術家の辻一弘氏は、インタビューの中で、「顔には、その人の生きてきた過程がすべてあらわれるんです。だから単に見た目だけでなく、自分のなかでその人のストーリーを想像し、それをシワなどのディテールで表現していきます」と述べています。
40代半ばを超えると『顔』によって、その人の生きてきた道筋が垣間見えるときがあります。
もちろん、ここでいう顔は、美人とかイケメンといった表面的な顔ではなく、話し方も含めてその表情・雰囲気から推測するものです。逆にいえば、顔つき以上にその人を短時間で判断できる手段はないと考えています。