
投資の世界で奇妙な状況が起きている。投資家のポートフォリオは恐らくそれに備えていないだろう。
米株式市場は世界の株式市場において圧倒的な存在であり、最近では世界市場の時価総額の3分の2を占めるほど巨大化している。米国が世界経済や世界人口に占める割合(25%と4%)はもっと低いが、それでも大抵は米市場の動向が世界市場を振り回してきた。
しかし最近、この関係が崩れている。これは投資の大変動を示唆し、今後数年間で米大型株のリターンが大きく落ち込む可能性がある。調査会社データトレック・リサーチのアナリストによると、米国の代表的な株価指数であるS&P500種指数と、米国以外の先進国株指数であるMSCI EAFEの間の通常の相関係数は、従来は0.83と非常に高かった。それが過去100日間では0.54に低下している。
これは見た目以上に大きな差だ。統計的には0.59を下回ると、平均から3標準偏差離れていることになり、0.3%未満の確率でしか起こらないはずの事象となる。足元の水準は数十年ぶりの低さだ。
市場が奇妙な動きをしている理由の一つは、ニュースを追っている人なら誰にとっても明らかだ。まず、ドナルド・トランプ氏の米大統領選での勝利が米国株を急騰させ、同時にトランプ氏の関税の脅しがドル相場を支えた。
その後の方針転換や矛盾する発表、そして米国の同盟国へのさまざまな要求が、ここ数日にそうした貿易相手国の株式・為替相場を押し上げる形となり、特に防衛関連銘柄が上昇した。一方、半導体大手エヌビディアなどの超大型7銘柄「マグニフィセント7」主導で世界的な株高をけん引してきた米国株は、勢いが弱まっている。
米国以外の株式の割安さが話題に上るようになった今、こうした乖離(かいり)はさらに広がる可能性がある。米資産運用会社リサーチ・アフィリエーツは、過去の市場パフォーマンスをけん引してきた全ての要因を網羅したデータベースを無料で公開している。それに基づくと、かなり楽観的な前提を織り込んでも、米国の大型成長株(グロース株)は今後10年間、厳しい状況に直面しそうだ。同じ指標で見ると、米国以外の割安株(バリュー株)のパフォーマンスは米グロース株を大きく上回る可能性がある。