職場で困っている人を見かけても、「おせっかいだったらどうしよう…」と躊躇したり、「たぶん大丈夫だろう…!」と自分に言い訳したり……。
気づかいをするときには、つい「心の壁」が現れてしまい、なかなか一歩が踏み出せないことが、あなたにもあるのではないでしょうか?
この連載では、「顧客ロイヤルティ(お客さまとの信頼関係づくり)」をベースに、ビジネスセミナーへの登壇やコミュニケーションスキルの研修講師を通して、全国200社・2万人以上のビジネスパーソンに向けて教えてきた『気づかいの壁』の著者、川原礼子さんが、「気がつくだけの人」で終わらず、「気がきく人」に変われる、とっておきのコツをご紹介します。

気づかい上手な「感じのいい人」が必ず心がけていることPhoto: Adobe Stock

完璧ではなく「60点」を目指す

 気づかい上手な人は、相手のストレスを減らすような気くばりができます。

 相手のストレスを徹底的に減らすプロが、「サービス業の従事者」です。

● コース料理や本日のおすすめなど、「限定メニューを用意するレストラン」
● 朝夕の食事時刻などを知らせ、「予告してくれる旅館」
● 食料品の保存方法までを「共有してくれるデパ地下の対面販売」
● つかず離れずのちょうどいい距離で「お客さまの領土を守る接客の店員さん」
● お客さまの好みや会話内容までを「カルテに記録しているヘアサロン」

 というように、プロは気づかいを本業として取り組んでいます。

 もちろん、普通のビジネスパーソンにとっては、そこまでの気づかいは必要ではありません。

「サービスのプロ」が求められるレベルが100点レベルの気づかいであるならば、一般のビジネスパーソンは「60点」くらいで十分です

相手を疲れさせないくらいが「ちょうどいい」

 自分の仕事が落ち着いたタイミングや、余裕があるとき、「ここぞ」というときに、ちゃんと相手に気配りができれば、合格点です。

 私が顧客対応担当者向けに行なう対応評価表でも、新人さんの合格点を「60点」に設定しています。
 これは、「お客さまから苦情にはならない程度」が目安になっています。
 そこから、徐々に気づかいを重ねて、70点、80点へとステップアップしていきましょう。

 それに、たとえば隣の席の人から、毎日のように100点満点の気づかいをされると、それはそれで、されるほうは気疲れします
 するほうもされるほうも疲弊してしまっては元も子もありません。
 一般の人がする日常の気づかいは、60点レベルでいいのです。

 逆に、たった60点だけでも、「できない人」と比べると圧倒的な差が生まれます
 それくらい、あいさつレベルの簡単なことが、多くの人にとってできていないのです。

 超一流の気配りは不要です。
 早速、今日から、できることを1つずつ増やしていきましょう。

川原礼子(かわはら・れいこ)
株式会社シーストーリーズ 代表取締役。
元・株式会社リクルートCS推進室教育チームリーダー。
高校卒業後、カリフォルニア州College of Marinに留学。その後、米国で永住権を取得し、カリフォルニア州バークレー・コンコードで寿司店の女将を8年経験。
2005年、株式会社リクルート入社。CS推進室でクレーム対応を中心に電話・メール対応、責任者対応を経験後、教育チームリーダーを歴任。年間100回を超える社員研修および取引先向けの研修・セミナー登壇を経験後独立。株式会社シーストーリーズ(C-Stories)を設立し、クチコミとご紹介だけで情報サービス会社・旅行会社などと年間契約を結ぶほか、食品会社・教育サービス会社・IT企業・旅館など、多業種にわたるリピーター企業を中心に“関係性構築”を目的とした顧客コミュニケーション指導およびリーダー・社内トレーナーの育成に従事。コンサルタント・講師として活動中。『気づかいの壁』(ダイヤモンド社)が初の著書となる。