職場の人間関係を完全制覇するための3つのコツ。「隠れた決定者を押さえる」「他部署の情報が集まる人を押さえる」あと1つは?
それを語るのは、これまでネット上で若者を中心に1万人以上の悩みを解決してきた精神科医・いっちー氏だ。「モヤモヤがなくなった」「イライラの対処法がわかった」など、感情のコントロール方法をまとめた『頭んなか「メンヘラなとき」があります。』では、どうすればめんどくさい自分を変えられるかを詳しく説明している。この記事では、本書より一部を抜粋・編集し、考え方次第でラクになれる方法を解説する。(構成/ダイヤモンド社・種岡 健)

職場の人間関係を完全制覇するための3つのコツ。「隠れた決定者を押さえる」「他部署の情報が集まる人を押さえる」あと1つは?Photo: Adobe Stock

職場の人間関係の悩みを解消する「ヒューマンマップ」

 職場って時々、謎解きゲームみたい。

「どうしてあの提案が通らないんだろう?」
「なぜかあの人とは話がかみ合わない…」

 そんなモヤモヤ、ありますよね。

 今日は、そんなモヤモヤをスッキリさせる「ヒューマンマップ」という思考法について共有したいと思います。

 職場の人間関係を「見える化」して、スッキリさせることで人間関係での悩みの軽減になります。
 良ければいちど、あなたもやってみてください。

こんな経験、ありませんか?

 営業企画部のTさんの体験談をご紹介します。
 彼は新しいキャンペーンのアイデアを何度も提案していたのに、なぜかいつも却下されていました。
 会議のたびに「もう少し検討が必要だね」と言われる日々。Tさんはだんだん自信をなくしていきました。

 ある日、同じ部署の先輩が休憩時間に声をかけてくれました。

「Tくん、良いアイデアなのになぜ通らないか知りたい? 実はね、Kさんに先に話してみるといいよ」
「Kさん? マーケティング部の?」

 と、Tさんが不思議に思っていると、驚いたことに、公式の組織図には載っていない“隠れボス”のような存在が会社の中にいたのです。

 Kさんは以前は営業企画部にいて同様のキャンペーンで大成功を収めた経験があり、会社の中で「キャンペーンの神様」と密かに呼ばれていたのでした。

 勇気を出してさっそくKさんに相談してみると、自分では気づきようがないような様々なアドバイスとともに、「期待しているよ」と応援してもらえました。

 すると、次の企画会議でKさんが、「Tくんの案、私は結構いいと思うよ」と一言がもらえたことで周囲の反応が一変し、今まで反対していた人たちまでもが「確かに良いかもしれない」と言い始め、それからTさんの仕事は人間関係で悩むことも減り、スムーズに行えるようになっていったのです。

 こんなふうに、よく知っているはずの会社でもあなたが知らない意外な人間関係、プロフェッショナルが隠れているもの

 そんな複雑な人間関係を簡単に「見える化」することで、メンタルヘルスを改善させる手法が「ヒューマンマップ」という技術なのです。

ヒューマンマップの作り方:3ステップで簡単!

 では、あなたも自分だけの「ヒューマンマップ」を作ってみましょう。難しくないので安心してくださいね。

①まずは自分を中心に描いてみよう

 紙の真ん中に自分の名前を書いてみましょう。
 そして、周りに毎日接している人たちの名前を書いていきます。

 よく話す人は近くに、あまり関わりのない人は遠くに。
「この人と話すと元気が出る!」「あの人とのミーティングは少し緊張する…」といった感覚で自由に配置してみてください。

②それぞれの人に色をつけてみよう

 次に、それぞれの人を自分でタイプ分けしてみましょう
 分類方法は、あなたが仕事で意識していること、「頭の回転の速さ」とか「血液型」とか、

● 赤タイプ:「早く結論を教えて!」結果を重視タイプ
● 青タイプ:「根拠は? 詳細は?」分析を優先タイプ
● 緑タイプ:「みんなはどう思う?」人間関係を重視タイプ
● 黄タイプ:「もっと大きな可能性は?」チャレンジタイプ

 Mさんは経理部の典型的な青タイプ。「この企画の予算計算、もっと細かく見せてもらえる?」といつも言われます。

 一方、企画部のSさんは黄色タイプで「このアイデア、もっと発展させたらどうなるかな?」と常に大きな視点で考えます。

 この色分けやタイプ分けをすることで、「なるほど! だからあの人とは話が噛み合わなかったんだ」という発見があったり、無理して合わない人とは距離を取ろうなどと人間関係の「見える化」によって、不安やストレスの軽減にもつながりますよ。

③見えない線をつなげてみよう

 最後に、人と人をつなぐ線を引いてみましょう。

「この人とこの人は仲が良い」「あの決定には必ずこの人の承認が必要」「この情報はいつもこの人から来る」など、見えない関係性を線で表現してみます。

 太い線は強い関係、点線は弱い関係など、自分なりのルールでOKです。
 最初はあまり浮かばなくとも大丈夫、後々に書き足していくイメージで、まずは自分の考える関係図を整理してみてください。

会社あるある! 隠れたパターン

 ヒューマンマップを作ると、こんな隠れたパターンが見えてきたりします。

● 隠れた決定者:公式の役職より実質的な影響力を持つ人(Tさんの例のKさんのような人)
● 情報の中継点:様々な部署の情報が集まる人(この人と仲良くなれば、いろんな情報が入ってきます)
● 休憩時間の重要会議:ランチや休憩中に重要な決定がなされていることも(知らないのは私だけ? という経験ありませんか)

 人間関係は自分できちんと把握できているようで、意外と見えない資格があるものです。
 図示してみると「こんな風になっているんだ」と再認識につながることもあります。

 あなたが思っているよりも複雑だったり、逆にシンプルに考えるキッカケにもつながりますので、「見える化」の力って思ったよりもすごいんです!

明日からできること

 今晩のリラックスタイム、5分だけでいいので自分の「ヒューマンマップ」を描いてみませんか?

「あ! だからあの提案が通らなかったんだ」「この人には細かい数字より、ビジョンから話した方がいいんだ!」という気づきがあって、人間関係の悩みも納得がいってスッキリすることも、仕事の専門スキルも大切ですが、この「見えない関係性」を理解する力で、あなたの職場生活はもっと楽にスマートに生活できるようになるかもしれませんよ

(本稿は、頭んなか「メンヘラなとき」があります。の著者・精神科医いっちー氏が特別に書き下ろしたものです。)

精神科医いっちー
本名:一林大基(いちばやし・たいき)
世界初のバーチャル精神科医として活動する精神科医
1987年生まれ。昭和大学附属烏山病院精神科救急病棟にて勤務、論文を多数執筆する。SNSで情報発信をおこないながら「質問箱」にて1万件を超える質問に答え、総フォロワー数は6万人を超える。「少し病んでいるけれど誰にも相談できない」という悩みをメインに、特にSNSをよく利用する多感な時期の10~20代の若者への情報発信と支援をおこなうことで、多くの反響を得ている。「AERA」への取材に協力やNHKの番組出演などもある。