1つ目の「時間の制約」とは、面談時間には限りがあり、そこで聞ける情報量には限界があるという当たり前の考えです。読者の中にも、「聞きたいことがたくさんあるのに時間切れで聞けなかった」という経験をしたことがある人は多いでしょう。
2つ目の「スキルの制約」は文字通り、顧客から重要な情報を収集してくるスキルを担当者が持っているかどうかという問題です。「経験の浅い担当者が自社商品の説明に終始し、顧客の情報を収集できなかった」というケースが典型例。「簡潔な説明ができない」「顧客にうまくヒアリングできない」など、いくつかのパターンが考えられます。
最後は「コミュニケーションの流れによる制約」です。担当者のスキルが十分であり、かつ事前に時間配分や面談の展開を組み立てていたとしても、面談がその通り進むとは限りません。「途中で話が脱線し時間を使ってしまった」「突然相手の上長が現れて、あいさつなどをしているうちに時間がなくなってしまった」というようなケースです。
このような制約がある中で、自社にとって重要な情報を収集する確率を高めるためには、「本人の自主的な努力や工夫に期待するだけではうまくいかないかもしれない」という視点が必要で、それこそが性弱説の考え方なのです。
「後の祭り」ではすまない
事後報告のみの報連相
ここまで説明すれば、冒頭のような「事後報告」だけではなく、事前に指導する「事前報告」の必要性が分かるでしょう。面談前に様々な状況を想定し準備することが、面談の精度を高め、上司と現場のすれ違いを減らすのです。
「事後報告」と「事前事後報告」について整理した、下の図を見てください。右側は、一般的な企業で比較的よく行われている性善説視点の「事後報告」。左側は、キーエンスで行われている性弱説視点の「事前事後報告」のイメージを示しています。

まずは、右側の事後報告のパターンです。事後報告とは文字通り、面談の後に報連相をし、結果の確認や指導をするパターンです。