いまシリコンバレーをはじめ、世界で「ストイシズム」の教えが爆発的に広がっている。日本でも、ストイックな生き方が身につく『STOIC 人生の教科書ストイシズム』(ブリタニー・ポラット著、花塚恵訳)がついに刊行。佐藤優氏が「大きな理想を獲得するには禁欲が必要だ。この逆説の神髄をつかんだ者が勝利する」と評する一冊だ。同書の刊行に寄せて、ライターの小川晶子さんに寄稿いただいた。(ダイヤモンド社書籍編集局)

子どもの将来のために、何をやっておくべき?
基本的に「どうにかなるさ」と思っているタイプで、あまり将来への心配をせず行き当たりばったりでやってきた。だが、子どもができてから「こんなにも不安をあおられるのか」と驚いた。
小さいうちにあれをやらないとまずい、これもやらないと将来困る、発達は大丈夫か? その地域にいて保育園・幼稚園には入れるのか? 学校選びは? 教育資金は……? 次々に突き付ける人が現れるのである。
「学習指導要領が変わったのはご存じですか? プログラミングが必修化されただけでなく……」
通信教育か何かをすすめる電話で、母親くらいの年代の人(声から推測)にたたみかけられたときには閉口した。
「はい、そういう関係の仕事をしているので」と適当に答えて電話を切ったが、こう不安をあおり続けられてはたまらない。タイミングによっては私も不安で何かせずにいられなくなるだろう。
最近は、AIの進化によって将来は仕事が減るという不安まで加わっている。
「じゃあ、何を学ばせたらいいのか?」
将来の不安を少しでも消すために、何をしておくべきかと考える人は少なくないと思う。
ストイシズムの哲学者、マルクス・アウレリウスの言葉を借りるなら、「理性」を育てておくことなんじゃないだろうか。
未来に煩わされるな
必要なときがくれば、いまあなたが現在のことに使っているのと同じ理性で対応できるのだから。(マルクス・アウレリウス『自省録』)
――『STOIC 人生の教科書ストイシズム』より
未来のことは誰にもわからない。
まわりに煽られていると、子どもに英語を習わせようと思うかもしれない。プログラミングも必要だと思うかもしれない。
しかしいくら英語がペラペラになっても、未来には必要なくなっているかもしれない。「仕事」という概念すら変わっているかもしれない。
未来を予測してあれこれ準備することは、不安の軽減にはなるが本質的なことではないだろう。
それよりもっと大事なのは、人としての理性を育てることだ。
内面を充実させ、美徳に則して行動できるようにする。ストイシズムでいう「美徳」は、「知恵」「正義」「勇気」「節制」という4つを基本としている。これらを育み、人として最高の状態になることが幸福に生きるということだ。
その軸を持っていれば、将来何が起ころうと、その都度判断して行動できるのだから不安になる必要はない。マルクス・アウレリウスはそう言っているのだ。
まずは親自身が理性を信じて不安を遠ざけ、しなやかに生きている姿を見せることが重要なのではないかと思う。
(本原稿は、ブリタニー・ポラット著『STOIC 人生の教科書ストイシズム』〈花塚恵訳〉に関連した書き下ろし記事です)