この大暴落が起きるまでは、金融機関は「つみたてNISAの運用益は非課税」「つみたてNISAはコツコツと投資信託を買っていくので安心」「安定した老後資金を準備するのに最適なので、高齢者もすぐに始めるべき!」と言って、新NISAを勧めていました。
私のように「つみたてNISAだって目減りするリスクがある」と述べると、「変な人」扱いされるほどでした。
20年以上も積立を
継続できる人は限られている
ところが、株価の大暴落を機に、「つみたてNISA」を勧めるプロの勧誘文句が変わりました。
手のひらを返すように、「つみたてNISAにもリスクがある。ただし、目先は乱高下しても、20年後にはプラスになる確率が高い」と説明を変えたのです。
なぜ、いっせいにこのようなことを言い始めたのでしょう。
じつは、金融庁のHPからダウンロードできる『つみたてNISA早わかりガイドブック』には、資産・地域を分散した積立投資を5年保有した場合と、20年保有した場合の運用成果の実績を比べると、後者の場合には元本割れしていないという結果を公表しています。
金融庁に問い合わせると、「1989年から5年間投資した場合はたしかに元本割れもあるが、20年間投資した場合には2%から6%くらいの収益を上げている」そうです。
ただし、「これは過去の実績をもとにした算出結果であり、将来の投資成果を予測・保証するものではありません」と書かれています。しかも、ここで取り上げられているのは、約6000ある投資信託のうちの「たった1本」。
金融庁は、つみたてNISAの対象となる投資信託として、信託報酬が低く、ノーロード(販売手数料が0円)の低コスト商品のみに限定し、「これらを長期投資すれば大丈夫」と説得したかったのでしょうが、それにしてもあまりに無理があります。
そもそも、「長期投資なら大丈夫」と言われたところで、たとえば20年以上も積立を継続できる人は限られます。
また、いつでも解約できるので、急な出費の時、現金化することもできますが、その場合、長期保有によるメリットを受けられるとは限りません。
「新NISA」に騙される
高齢者たちの末路
考えてみてください。2019年の日本人男性の平均寿命は81.41歳。日常生活を制限されずに暮らせる「健康寿命」は、72.68歳。女性の場合は、平均寿命が87.45歳、健康寿命は75.38歳です。
ということは、仮に65歳から20年間積み立てたら、85歳になります。亡くならずに生きていても、楽しくお金を使えない身体になっているかもしれません。