「ロジカルシンキング」を突き詰めた結果、超つまんない人間になる。これからの時代に必要なスキルとは何か。
次々と新たなビジネスを仕掛ける稀代の起業家、佐藤航陽氏。数々の成功者に接し、自らの体験も体系化し、「これからどう生きるか?」を徹底的に考察した超・期待作『ゆるストイック』を上梓した。
コロナ後の生き方として重要なキーワードは、「ストイック」と「ゆるさ」。令和のヒーローたち(大谷翔平、井上尚弥、藤井聡太…)は、なぜストイックに自分に向き合い続けるのか。
『ゆるストイック』では、新しい時代に突入しつつある今、「どのように日常を過ごしていくべきか」を言語化し、「私自身が深掘りし、自分なりにスッキリ整理できたプロセスを、読者のみなさんに共有したいと思っています」と語っている。(構成/ダイヤモンド社・種岡 健)

「合理性」には限界がある
現代では「論理」が過剰に信奉されている傾向があります。
「論理的思考法(ロジカルシンキング)」があらゆる場面で求められて、それをベースに意思決定をすれば間違えないように考える人もいます。
しかし、ロジカルシンキングには大きな弱点が存在していることを認識しておく必要があります。
ロジカルシンキングは、一貫して筋が通った考え方を説明する技術であり、特にビジネスの場面では重要です。
しかし、他人を説得するのには効果的でも、自分の判断に必ずしも役に立つとは限らないのです。
この背景には、「限定合理性」という考え方があります。
限定合理性とは、人間がすべての情報を知り尽くして合理的に決断できるわけではなく、限られた情報と認識の中で最もマシな判断をしているにすぎないというものです。
つまり、人間が物事の「全体」を見通すことは難しく、常に不完全な情報のもとで不完全な判断を下さざるを得ないのです。
「限定合理性」が原因
たとえば、他の企業が同じビジネスを検討しているかどうかをリアルタイムで把握するのは不可能です。
競争環境がどう変わるかも予測しきれません。
そのため、判断材料が欠けている中で、自分の持っている情報に基づいて判断せざるを得なくなります。
さらに、ロジカルかどうかの判断は、その判断をする人たちの知識や経験にも大きく影響されます。
業界の動向をよく知っている場合と、そうでない場合では判断が異なります。
それと同じように、構築されるロジックや、それに対する納得感も人それぞれ異なるのです。
これも、各人が持つ情報や認識の違いによる「限定合理性」が原因です。
こうしてみると、ロジカルシンキングは、人を「説得」するのには役立ちますが、意思決定の「正確さ」を保証するものではないとわかります。
「非合理」や「運」を取り入れよう
現実というのは、人間の認識を超える複雑さがあるため、「完全に合理的な判断」は難しいと言えます。
むしろ、動き出して新しい情報を得ながら、認識を更新していくことが現実的な方法なのです。
これを受けて私は、「今わかる範囲で最良の判断をするが、現実が見えてくるにつれてロジックも変わりうる」という考え方が重要だと考えています。
将来にわたって本当に合理的であろうとするならば、現在の多少の非合理を受け入れないといけません。
なぜなら、取得できる情報は将来にわたって変化するからです。
意思決定の「判断軸」としては限界があることを理解しておきましょう。
運の考えを取り入れた、「ゆるストイック」という生き方こそが、これからの時代に必要になってくるのです。
株式会社スペースデータ 代表取締役社長
1986年、福島県生まれ。早稲田大学在学中の2007年にIT企業を設立し、代表取締役に就任。ビッグデータ解析やオンライン決済の事業を立ち上げ、世界8ヵ国に展開する。2015年に20代で東証マザーズに上場。その後、2017年に宇宙開発を目的に株式会社スペースデータを創業。コロナ禍前にSNSから姿を消し、仮想現実と宇宙開発の専門家になる。今は、宇宙ステーションやロボット開発に携わり、JAXAや国連と協働している。米経済誌「Forbes」の30歳未満のアジアを代表する30人(Forbes 30 Under 30 Asia)に選出される。最新刊『ゆるストイック』(ダイヤモンド社)を上梓した。
また、新しくYouTubeチャンネル「佐藤航陽の宇宙会議」https://youtube.com/@ka2aki86 をスタートさせた。