年金で受け取る場合は、「公的年金等の控除」が使えるのがメリットです。たとえば65歳以上の方の場合、公的年金と確定拠出年金の受給額合計が年330万円未満で、それ以外の所得金額が年1000万円以下であれば、控除額は110万円となります。

 公的年金を年150万円受け取れる人が、確定拠出年金で10年にわたり年100万円を受け取るとすると、250万円が年間の公的年金等の収入となります。この場合、「250万円-110万円=140万円」が課税対象となる雑所得となります。

 一方、確定拠出年金を一時金で受け取っていた場合、「150万円-110万円=40万円」で、課税所得は40万円となります。年金受け取りにすると、課税所得が年100万円多くなる計算です。

退職金、確定拠出年金、税金、
社会保険料、株式相場で選択

 最終的な損得については、退職金や退職後の勤労収入などさまざまな要因がからむため、一時金受け取りと年金受け取りを単純比較して優劣を決めることはできません。

 とはいえここで見た事例では、一時金で受け取れば課税所得は400万円で、1回の課税で終わるのに対し、年金受け取りにすると毎年100万円ずつ課税所得が多くなってそれが10年継続すると考えると、一時金受け取りのほうが有利に感じます。

 かくいう私も、確定拠出年金で作り上げた資金は一時金で受け取りました。

 読者の皆さんは、ご自身の退職金や確定拠出年金で作り上げた資産、退職後に見込まれる勤労収入、税金、社会保険料などを考え合わせ、必要に応じて専門家の助言を得ながら受け取り方法を検討してください。

 なお、資産の取り崩し目線による、受け取り方法の選択についても少し言及しておきます。確定拠出年金を投資信託で運用していた場合、受け取る時期の相場環境によって、もし想定通りの資産額に到達できたのであれば、一時金受け取りを選択します。

 万一、厳しい相場環境のときにその時期を迎えるならば、その段階で年金受け取りに切り替えることを選択してもいいのではないでしょうか。つまり、確定拠出年金の中で「使いながら運用する」方法を取るのです。

「60代6000人の声」アンケート(編集部注/筆者が代表を務めるフィンウェル研究所が行っている調査)では、投資についてもいくつか質問しています。

 まず資産運用の状況では「現在、資産運用をしている」と回答した人は43%に達しています。そのうち2024年1月からスタートした新NISA口座を「既に開設して投資をしている人」が61%を占めていました。