
確定拠出年金や新NISAに取り組む人は多くなったが、年金の受け取り方やNISAの売り時を判断するのは難しい。結局、投資は積み立てるよりも切り崩す方が難しいのである。そんな確定拠出年金や新NISAの出口戦略をお金のプロが教える。本稿は野尻哲史『100歳まで生きても資産を枯渇させない方法』(幻冬舎新書)の一部を抜粋・編集したものです。
一括受け取りは控除額が
大きくなるメリットがある
確定拠出年金(DC)は、10年以上の加入期間があれば60歳から受け取ることができ、75歳までであれば受給開始時期を選択することができます。受け取る方法には、(1)一時金として一括で受け取る、(2)年金方式で決まった期間に分けて受け取る、(3)その2つを組み合わせた方法で受け取る、の3種類があります。
現状では、企業型確定拠出年金は9割以上が一時金での受け取りとなっています。この記事の読者の皆さんの中でこれから確定拠出年金を受け取るという方も、一時金での受け取りを選ぶ人が多いかもしれません。ここでは、一時金を選ぶ人が多い理由を確認しておきましょう。
一時金で受け取る場合のメリットは、退職所得控除を使えることです。退職金など他の退職所得と確定拠出年金の一時金受け取り分を合算し、その総額から勤労年数に合わせて計算された控除額を差し引きます。
たとえば40年同じ会社に勤務し、退職金2000万円と確定拠出年金の一時金受け取り1000万円、合計3000万円を受け取ったとします。退職所得控除の額は、「最初の20年は年額40万円、それを超えると1年あたり70万円」で計算されます。このケースでは「20年×40万円=800万円」と「20年×70万円=1400万円」で、控除額は合計2200万円となります。
課税所得(所得税の対象になる所得)は「3000万円-2200万円=800万円」の半分で、400万円です。大きな控除額に加えて、一度で課税が終了することもメリットの1つかもしれません。
分割は公的年金の控除があるが
毎年課税されるデメリットも
一方、同じケースで確定拠出年金を10年間の年金受け取りにしたとしましょう。すると、退職所得は退職金の2000万円のみとなり、控除額2200万円を差し引けば課税対象は0円となります。
確定拠出年金で作った1000万円については、退職後の運用収益を0%として計算しても、10年間にわたり年100万円を受け取ることになります。これは毎年の課税所得として計算されます。