なお、アンケートの実施時期は2月2~6日でしたから、6割強の人たちは1月中に新NISA口座を開設していることになります。また「これから新NISA口座を開設するつもり」と答えている人が17%に達していましたから、60代の投資家のおよそ8割は新NISA利用者ということになります。
6割強の60代がNISA運用も
退職者には向かないのが新NISA
退職者の新NISAに対する積極的な姿勢が見えますが、実際にはどう使うべきなのでしょうか。
NISAとは投資に関する収益が非課税になる制度です。通常は投資による収益、たとえば配当や売却益に対して所得税、住民税、復興特別所得税の合計で20.315%が課税されます。それが新NISAの口座であれば非課税となります。
新NISAでは制度が恒久化されたうえ、非課税投資ができる期間も無期限となりました。年間投資上限額は、つみたて投資枠と成長投資枠の合計で360万円、その累積額として非課税保有限度額が1800万円となり、大幅に拡充されました。
新NISAは、現役世代の人たちにとっては非常に使いやすいものになったと評価していいでしょう。ただ、退職後の人たちにとっては、あまり使い勝手がいいとはいえないところがあります。
ポイントは保有資産の「配分比率の修正」と「上限枠」です。配分比率の修正には、株価の変動などで当初設定した資産配分比率がずれてしまったときに、元に戻すリバランスと、リスク性資産比率そのものを引き下げるために行うリアロケーション(配分比率の見直し)があります。
どちらも一部の資産を一度売却して、他の資産を買い戻すという行動をとりますが、退職世代にとっては大切な対策です。年間の投資上限額360万円や非課税保有限度額1800万円に残りがあれば課税口座を使うより、非課税口座を使うほうが有利になる点は現役世代の人たちと変わりません。
しかし、退職世代は、既に一般NISAで10年投資を続けてきて、これから360万円ずつ5年間移管作業をすると、1800万円の枠を5年間で使い切ることになる人もいらっしゃるはずです。また退職金での追加で枠を使い切る人もいるはずです。
新NISAは銘柄の乗り換えが難しく
枠を開けるにも売却額が増える
そうした非課税枠を使い切った人たちが、リバランスやリアロケーションをしようとすると、新NISAには、年間非課税投資上限額や非課税保有限度額があるので、買い戻すときの足かせになる可能性が高くなるのです。この点はよく考えたうえで、利用することをおすすめします。