肺がんリスクと受動喫煙の関係、「暴露あり」で24%増Photo:PIXTA

 昭和の昔からは想像できないほど屋内禁煙・分煙が定着した。

 2023年11月に実施された「国民健康・栄養調査」(厚生労働省)によると、習慣的に喫煙している者の割合は男性25.6%、女性6.9%で、直近10年間で男女ともに有意に減少している。

 喫煙者自体が減った影響で、副流煙の受動喫煙に巻き込まれる場面も減った。受動喫煙は肺がん、心血管疾患の確実なリスクであり、換気が難しい閉鎖空間では徹底的な禁煙・分煙が望ましい。

 イタリアの研究グループは、受動喫煙と肺がんの関連を調べた126の研究結果を精査し、合計2万1740人あまりの肺がん患者のデータを再解析している。

 その結果、副流煙に暴露された受動喫煙の非喫煙者は、未暴露の非喫煙者と比較し、肺がんリスクが24%増加。受動喫煙の場所別では、職場での暴露で38%増、自宅および職場で37%、自宅のみで20%のリスク増加が認められた。特に職場では暴露時間が長く、リスク増につながる可能性が高い。

 ちなみに前述した厚生労働省の調査でも「職場」は「路上」に次いで受動喫煙の機会が多かった。一方、自宅での受動喫煙機会は5%で、これは良い傾向だろう。

 とはいえ、配偶者からの受動喫煙のみでも肺がんリスクは1.18倍に上昇する。子供時代の受動喫煙だけでも1.12倍だ。やはり閉鎖空間は禁煙が望ましい。

 受動喫煙本数との関連では、1日5本の受動喫煙で肺がんリスクが5%増加し、本数が増えるにつれてリスクが直線的に上昇した。

 また暴露期間が数年~20年まではリスクが急増する一方、30年、40年と続くと高止まりする傾向も示された。近年、女性の肺がんが増えている背景には一昔前の受動喫煙の影響がありそうだ。

 受動喫煙の肺がんは能動喫煙とは異なる機序で発症する。肺の奥にできやすいため、自覚症状に乏しく早期発見が難しい。

 喫煙者ならずとも副流煙にさらされた経験がある方は、肺がん検診を継続して受けておこう。検査結果を前年と比較し続けることが早期発見の一助になる。

(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)