習近平国家主席Photo:Kevin Frayer/gettyimages

 ドナルド・トランプ氏が昨年11月の米大統領選で勝利した直後、中国の習近平国家主席は、米国とソ連の冷戦時代の対立関係を緊急に分析するよう側近に指示した。

 中国高官と協議する複数の関係者によると、トランプ大統領が中国との対決姿勢を強める中、習氏は中国がかつてのソ連のように孤立することを懸念していた。

 その心配は的外れではない。現在、国際社会で孤立しているように見えるのはトランプ氏かもしれない。メキシコやカナダなど同盟国との貿易摩擦を引き起こし、ウクライナ戦争への対応で 欧州を不安にさせ 、グリーンランドとパナマ運河の併合を宣言している。しかし実際には、中国は強い立場にはない。

 国内経済が危機にひんする中、習氏は守勢に回っており、自国を貧困から脱却させた世界貿易システムをできる限り維持しようとしている。一方で太平洋の向こう側では、トランプ氏がまさにその貿易システムの再構築を目指している。同氏と側近らは、このシステムが米国を犠牲にして世界の他の国々、とりわけ中国に恩恵をもたらしたとみている。

 問題は貿易だけではない。世界の2大経済国の指導者の思惑がぶつかり合うことで、中国がまさに避けようとしている事態が起こりかねない。それは冷戦以来見られなかった超大国の衝突であり、経済、技術、そして地政学的な覇権を巡る全面的な対立だ。

 選挙戦を通じて中国に対抗する必要性を強調していたトランプ氏は、大統領選に大差で勝利し、議会で共和党が多数派となる中、ホワイトハウスに復帰した。側近らによると、トランプ氏は強い立場で中国側と交渉できると考えている。