静かなスタートを切った
「トランプ2.0」の通商政策
第2次トランプ政権が始動した。トランプ氏は、1月20日の大統領就任式当日に、異例の多さとなる40超の大統領令・覚書に署名し、その内容は、移民政策、エネルギー政策、脱炭素政策の修正を中心に多岐に渡った。就任式前から周到に準備して、政策を加速させる意欲が窺える。
しかしながら、最も注目が集まっていた他国への関税引き上げは実行に移されず、通商政策については目立たない印象であった。就任日に署名された通商政策関連の大統領令・覚書は基本的に「米国第一の貿易政策(America First Trade Policy)」の1つであり、その内容は、米国の貿易赤字などに関する調査指示、関税徴収を担う外国歳入庁の創設検討などにとどまった。
もちろん、関税引き上げを即座に実施しなかったからと言って、トランプ氏がトーンダウンしているわけではないだろう。中国、メキシコ、カナダに対する関税引き上げは、予告していた1月20日の即時発動はなかったものの、トランプ氏は次の関税引き上げのタイミングとして2月1日を示唆した。予断を許さない状況が続く。
トランプ氏は、「関税」という言葉を辞書の中で最も美しい言葉と公言してきた。大統領選中には関税引き上げ策に多く言及し、その内容もエスカレートしていった。最終的には、中国からの全ての輸入品に60%、その他の国からの輸入品に10~20%、メキシコからの自動車に100~200%の関税を賦課する方針を示していた。