トランプ関税で「貿易戦争」再燃!米中関係を読み解く3つのポイント【専門家が解説】トランプ大統領 Photo:Alex Wong/gettyimages

「トランプ関税」に
中国が報復措置を発動

 1月20日に大統領に就任したドナルド・トランプ氏、およびトランプ第2次政権による言動や政策が、米国内外で物議を醸している。それらがもたらし得る状況に関しては、さまざまなシナリオが考えられる。

欧州と中東で続いている戦争が終結するのか、それとも一層泥沼化するのか?
台湾海峡を巡る地政学リスクが一層高まるのか、それとも緊張緩和に向かうのか?
戦略的競争関係にある米中間の関係が改善するのか、それとも悪化するのか?
米国は「世界の警察官」としての役割を放棄するのか、それとも強化するのか?
トランプ大統領のカムバックは、世界の民主主義を後退させるのか、それとも?

 トランプ第2次政権の発足により、我々が直面するこの世界の在り方や行き先を巡って、「振れ幅」と「不確実性」が高まっていることだけは間違いないと言える。

 本連載がフォーカスする中国との関係で言えば、トランプ第2次政権発足以降の動向として、最も分かりやすい現象は「トランプ関税」であろう。

 トランプ大統領は2月1日、中国の輸入品に対する10%の追加関税を発表した。それを受けて2月4日、中国側は報復措置として、米国からの石炭と液化天然ガス(LNG)に15%、石油や農業用機器、大型エンジン搭載車などへの10%の関税を課す旨を発表。

 2月10日に設定された発動開始日までに、カナダやメキシコのように、首脳同士での協議を通じて関税の応酬が一時的に回避される可能性もあったが、予定通りに発動された。戦略的競争関係にある米国と中国との間に、安易な妥協や歩み寄りは存在しないという現実が突きつけられた形である。

 2月10日をもって、米中貿易戦争が再燃、言い換えれば、「米中貿易戦争2.0」が勃発したのである。中国共産党・政府で習近平政権の外交を統括する王毅政治局委員兼外相は2月14日、ドイツで開かれたミュンヘン安全保障会議で演説した後の質疑応答で、「米国が中国を抑圧、封じ込めることに固執するならば、我々は徹底的に受けて立ち、どこまでも付き合う」と主張している。

 この主張は、3期目入りしている習近平政権の対米外交における基本的立場を表していると言える。