なぜ日本人は欧米人と比べて「潔い終活」ができないのか?高額療養費の騒動で考えた日本人が欧米と比べて「潔い終活」に臨めないのはなぜなのか(写真はイメージです) Photo:PIXTA

年金受給の相談で押し問答
面倒な世の中になった

 私も70歳となる月を迎えました。年金受給は70歳からを希望していたので、年金事務所にどうしたらいいか、電話してみました。月初めの月曜のためか、午前中はずっと話し中。夕方になってやっと電話が繋がりました。手持ちの年金手帳で基礎番号や本人確認をしたあと、問答が始まりました。

 まずは、「72歳からの受給にすると7パーセントお得だとご存じですか?」「あと2年遅らせませんか?」と、受給時期遅延の説得が長時間。すでに70歳からと決めていたので、今度年金事務所にいくことにしました。マイナンバーの保険証への紐付けもまだだし、いずれマイナンバーに年金の情報も入るらしいとのこと。なんだか面倒な世の中になりました。

 それにしても、同級生と話をすると、みなさん、色々な悩みを抱えていることに気づきました。私の場合、子どもはいない夫婦2人だけ。ローンももうないので、12歳の老犬が生きている間は元気でいる必要はありますが、あとは「夫婦2人で同時に死ねれば寂しくなくていいね」などと話している、一番気楽な立場です。

 それだけに、今回国会で高額療養費制度の負担上限額の引き上げ案が提出されたことには、かなり衝撃を受けました。結果的にこの案は見送られましたが、政府も自民党も予算削減にばかりアタマがいきすぎて、難病やガンの治療にかかる人々に色々な事情があることを顧ず、あまりに短絡的で簡単な議論で済ませてしまったことが、全面撤回という珍しい結果になった原因だと思います。

 日本の国民皆保険は世界でも数少ない誇れる制度。なるべくその根幹を維持すべきであることは、政府も国民も納得しているはずです。今後、徹底的な議論が医療保険全体について必要になってくると思います。たとえば、極めて効果が高いといわれる「オプジーボ」という抗がん剤についての医療保険制度はどうなっているのか、見てみましょう。

 開発に貢献した京都大学の本庶佑氏らが2018年にノーベル医学・生理学賞を受賞した免疫治療薬「免疫チェックポイント阻害薬」の中の1つである抗PD-1抗体薬「オプジーボ」は、日本では14年以降に次々と治験が進みました。1年間で数千万円もの高額な治療費がかかります。患者さんはどのくらいの治療費を負担する必要があるのでしょうか。