「薬価基準」と呼ばれる価格表でわかる薬価は、その薬の総額のことです。これは、患者さんが支払う負担額ではありません。3割負担の場合は、「薬価×30%」を薬代として患者さんが支払うことになります。

 オプジーボが14年に初めて承認されたとき、対象となったのはメラノーマ(悪性黒色腫)という皮膚がんだけでした。対象人数が少ないため、薬価は非常に高額に設定され、たとえば体重66kgの人(日本人の男性の平均体重)が1年間投与した場合は月におよそ300万円、1年間では3800万円もの薬価となっていました。

医療財政の破綻懸念で進んだ
オプジーボの薬価引き下げ

 翌15年12月に肺がんの治療薬として適応拡大されます。肺がんの患者さんは多いので、この薬価で多くの患者さんが使うと日本の医療財政が破綻すると騒ぎになり、17年2月の薬価改定時に当初の半額に引き下げられました。腎細胞がん、頭頸部がん、胃がんなど、さらに適用が広がり、それに応じて薬価も引き下げられ、18年11月には当初の4分の1程度の年間1090万円ほどとなり、オプジーボの用量はこれまでの体重1kg当たり3mgから、体重に関係なく1回240mgの固定用量に変更されました。

 日本では国民皆保険制度によって、保険診療であれば医療費の自己負担割合は、大部分の人(小学校入学後から69歳)が3割負担となっています。具体的に言えば、小学校入学前は2割、小学校入学後〜69歳までは3割、70〜74歳は2割(現役並み所得者は3割)、75歳以上は1割(現役並み所得者は3割)です。オプジーボは、仮に1年間使用した場合、約1090万円となりますから、3割負担でも300万円以上かかります。

 しかしながら、こうした高額な医療費の自己負担を軽減させるために、「高額療養費制度」という仕組みが設けられています。今回議論になったのは、この高額療養費制度の必要性が増えすぎたので抑制しようという問題で、この制度も日本で公的な健康保険に加入している人なら誰でも利用できます。

 現在、この制度を利用すれば、オプジーボを1年間使用した場合でも、大多数の人については自己負担額60万円強(年収、年齢により変わる)未満で済むことになります。私は、このオプジーボでがんが寛解した政治家を知っています。高名なその政治家は、その後も数々の迷言を放っては世界から厳しい声を浴びました。

 国会議員クラスになると、歳費月額は129万4000円。3割負担できない収入ではありません。かつて世田谷区の一等地に住宅を所有し(ローン返済中と本人は新聞に回答、現在は高級老人ホームに転居)、他にも高額のゴルフ会員権を実質上贈与された疑惑もあります。