若者や、多くの子どもを抱える家族が難病にかかったら、この制度は大変有効です。そして、これは日本が世界に誇る素晴らしい制度であり、絶対守るべきものです。今回予定されていた改革でも、減らせる金額は4000億円程度(厚生労働省案)で、他にももっと見直すべき医療費の無駄遣いが多々あります。
「健康保険の3割負担で大丈夫」
国会議員は自ら腹をくくったらどうか
高額療養費の費用を抑制するために、日本人の「侠気」にまず期待したいと私は思います。高額治療を受けても、高額療養制度を利用しないで済む程度の収入を得ている国会議員や財界人は、「自分たちは健康保険の3割負担で大丈夫」というメンバーを募ったらどうでしょう。普段「国民の手取りを多く」などと言っている政党の皆さんこそ、「高額療養費制度は受けないで、その分、財源を増やしましょう」と言っていただきたいものです。もちろん、高額療養費の負担上限額の引き上げを提案した、自民党も公明党もです。
いや、彼らに「死ね」と言っているわけではありません。実際にがんを患う国会議員の数は、その中でも多くはありません。議員でも家族が多かったり、難病患者を抱えたりしている人は前述のメンバーに加入しなくてもいいし、本当に必要に迫られる事態になったら制度の適用を申請すればいいのです。
政府や議員が予算不足をなんとかしようとする覚悟を持てば、国民だって高額療養費を減らしていける人は保険適用のみでやり繰りしようとするだろうし、あるいは国家への遺贈を考える老人や奇特な人も現れるかもしれません。大切なのは、国民皆保険制度が崩壊させぬよう、日本人全体が真剣に制度維持を考えることです。
たとえば、私の年齢になれば、決めておかねばならないのが終末期医療の問題です。老衰で食欲がなくなり、胃瘻(いろう)や点滴でただ生き延びる人生はイヤだと思っていても、そのためにはリビング・ウィルの書類をきちんと整備しておかねばなりません。
事前に夫婦で話をしていても、口頭での約束だけでは、いざ病院につれていかれると治療を受けないわけにはいきません。「病院は治療をすべきところだ」というのが日本の病院の基本思想らしく、食事ができなければ胃瘻の実施を求められ、自分の意志もはっきり示せない状態だと管に繋がれてしまう可能性があります。しゃべることと、本を読むこと、原稿を書くこと以外に趣味がない私のような人間が、そんな病院での暮らしが愉しいはずはありません。