
PHOTO: ILANA PANICH-LINSMAN FOR WSJ
米電気自動車(EV)大手 テスラ ほど、ブランドと最高経営責任者(CEO)のイメージが密接に結びつく会社はあまりないだろう。テスラの創業以来、大半の期間はそれが同社の事業にとってプラスだった。
テスラCEOを務める実業家イーロン・マスク氏が世界の化石燃料への依存を減らすと宣言し、EVの魅力を広く訴えかける姿は、テクノ環境主義という彼の壮大なビジョンへの忠誠心を示したい大勢の購入者を引きつけた。
だが今やマスク氏はドナルド・トランプ米大統領と手を組み、国政の深みにどっぷり漬かっている。そうした中で多くのテスラ車オーナーや購入希望者は、いまテスラ車のハンドルを握ることがどのような意味を持つのか自問している。渦巻く疑念がテスラにとって憂慮される数字となって表れ始めている。
ロサンゼルス在住のテレビ業界幹部、ガース・アンシエさんは1年以上前、テスラ車に乗っている姿を見られたらどう感じるのか、オーナー仲間の2人とあれこれ議論したと振り返る。「彼らはこう言った。『この車を運転していると、赤い大きなMAGA帽(米国を再び偉大にと書かれたトランプ支持者の帽子)でドライブしている気がして、どうも落ち着かないよ』」
最近アンシエさんは4年前に購入したテスラの電動スポーツタイプ多目的車(SUV)「モデルX」を売りたいと考えている。「もし彼(マスク氏)の振る舞いがなければ、恐らくテスラ車に乗り続けたと思う」
テスラは米国のEV販売台数で断トツの首位を占め、顧客ロイヤルティーでも自動車業界を長年リードしてきた。調査によると、多くのオーナーは今すぐテスラというブランドを見捨てる気はない。だが最近の世論調査でブランドの訴求力低下が明らかになった。販売データからは財務面で悪影響が出始めていることがうかがえる。
マスク氏が米大統領選に関わる前の2022年に自動車コンサルティング会社ストラテジックビジョンが実施した調査では、車を買い求めようとする人の22%が次に購入する際はテスラ車を「間違いなく検討する」と答えていた。同社のアレクサンダー・エドワーズ社長によると、メルセデス・ベンツやBMWなど他の高級車ブランドと肩を並べていた。